第2章 わるいこ
「到着しました」
キュッ、とブレーキ音が鳴って車が止まる。
は僕の服に引っ付いて、胸に顔を埋めていた。
「ほ〜ら、。ついたよ」
「や、…、やだ」
「はい我儘言わな〜い。抱っこしたげるから行くよ」
相変わらず外に出向くことを嫌がる。
僕はもう慣れた、とその身体を持ち上げて、伊地知が開いた後部座席のドアから外に足を踏み出した。
「っや、やだあっ!い、いじちさ、いじちさん助けて…っ、」
「っく…、私の良心を擽らないでください…。五条さんには逆らえない……怖い…」
「聞こえてるよ」
「ハッ…!わ、私は何を!!」
伊地知ってたまに心の声漏れるよね。
てか漏れてなくてもだいたい考えてることわかるし。
僕は伊地知をじとりと見つめてを抱き、足を進める。
後ろでは伊地知が「では、私はここで」と腰を折った。
は相変わらず僕の服にしがみついてブルブルと震えている。
「…ひ、ひと、……こわいこと、する」
「しないよ。僕も硝子も、君に何もしてないでしょ?」
「……でも、だって」
「だ〜いじょぶだよ。会いに行くのは君と同い年の子だからさ」
そう。これから僕らが会いに行くのは、と同い年の子供。
数年前に僕が押しかけてから、会う度嫌な顔をする可愛くない小学生。
「あ、いた」
「…〜っ、かえろ?五条さん、」
「可愛いこと言っちゃって。でも五条さんはそれくらいじゃ靡きませ〜ん」
クイ、と僕の服を引っ張る。
あまりの可愛さに心を打たれそうになりながらも、目的を果たすため足は止めない。
一歩、一歩と歩く度、は僕の服を強く握りしめていた。