第2章 わるいこ
「や、やだっ!知らない人、こわい……っ、行きたくない…!」
「は〜い、我儘言わないの」
そう言って腕の中で暴れるを抱いて、僕は伊地知の車に乗り込む。
そして後部座席でを横抱きにして身体をやんわりと拘束し、運転席に座る伊地知に向かって「出して」とだけ呟いた。
「は、はいっ…!」
少し裏返った声で返事をした伊地知はアクセルを踏む。
「…お外、こわい……っ、こわい、よ…」
ぽつぽつと独り言を零すをふと見下ろすと、は ぎゅっと縮こまってふるふると震えていた。
顔は青く染って体温が冷えているのがわかる。
本当に怖いんだ。
「、大丈夫だよ」
「っ…、も、もし…こわいことされたら、?」
今のはそのもしもが酷く怖いようで、取り敢えず落ち着けてやろうと髪を撫でる。
そして、
「大丈夫。僕が守ってあげるよ」
「ま、まも…る?私を、…?」
「当たり前でしょ、はまだ子供なんだから!僕の背中に隠れてぴいぴい泣いててもいーんだよ?」
僕はそう言って、茶化し笑いながらを見る。
するとは大きな目をいっぱいに開いて驚いた表情をしていた。
「え、どうしたの」
「…私は、まもらなきゃダメ、でしょ?」
「ん〜?まあ、ゆくゆくはそうなるね。でも今じゃない」
ぽふん、との頭に手を置いてわしわしと撫ぜる。
は僕の膝の上にちょこんと座ったまま、さっきの表情からピクリともしない。
「……まもられるのは、初めて、だから」
そして大きな目から涙を溢れさせ、それはぼとぼとと輪郭を伝って服に濃い染みを作った。
(…ま、この子は強いから仕方ないか)
身に余る力を授けられ、この世に産まれ落ちた。
周りの術師も、を言葉匠に使って今まで呪霊を祓わせてきたんだろうな。
(ったく、無垢な女の子に無茶させやがって。大人気ない)
僕はの頭をぽんぽんと撫でながら、窓の外を眺めた。