第8章 百鬼夜行の、その最中※
膝に伝わる重みと、腕に触れる毛並み。
その穏やかさに、意識の端がまた、ゆっくり溶けていく。
「玉犬、元気だった?任務で怪我、してない?」
うとうとと頭で船を漕ぎながら、玉犬の頭を撫でて問いかける。
そんな私の身体を左右から支えるように、
お座りした玉犬たちは、返事の代わりに私の肩にぐり、と頭を擦り寄せてきた。
その仕草がやけに愛らしくて、
伝わってくる温もりが心地よくて、余計に眠気を誘う。
「ねえ……玉犬は、恵くんのこと好き?」
「「ワフ!」」
問いかけると、玉犬たちは一瞬だけしゃんと身体を起こし、迷いのない声で同時に鳴いた。
その即答ぶりが可笑しくて、思わずくすりと笑ってしまう。
これは──相当好きなやつだ。
「私もね、恵くんのこと大好きなの」
囁くようにそう言って、両腕で玉犬たちを抱きしめる。
そのまま二匹の頭を胸に抱くと、呼吸のたびに毛並みがわずかに揺れるのが分かった。
きもちいい。
このまま、眠ってしまってもいいんじゃないかと思うくらい。
──でも
今だからこそ、言っておかなきゃいけないことがある。
「…恵くんのこと、よろしくね」
私は、恵くんの任務に着いていくことは出来ない。
隣で戦うことも、同じ苦境を乗り越えることも、もう出来ない。
でも、何かあった時は、必ず一番に駆けつける。
だからそれまでは。
絶対に恵くんを裏切らないこの子たちに、任せさせてほしい。
私に言われるまでもない。
それがこの子たちの使命。
そう分かっていても───こうして言葉にしないと、私は心の底から安心して、恵くんを任務に送り出せなかった。