第7章 愛の形
衝撃を吸収するように自分の胸に飛び込んだナマエを、五条さんはこれ見よがしに抱きしめる。
「わー、久々の生ナマエ♡あったか〜い」
「私は暑いです、五条さん………」
「え〜釣れないなぁ」
「……」
陽光を背負って満足げに笑う白い塊と、その腕の中でされるがままになっているナマエ。
離れろと思っていたし、実際離れさせようともしていた。
ただ、五条さんを選ばされる形でそれが叶ったのが、どうしても気に食わない。
「恵にいいこと教えてあげる」
不機嫌にかられたように五条さんを見上げていると、五条さんは満足げに鼻を鳴らしてそう言った。
この人の言う"いいこと"は大抵の場合、最悪の角度から投げ込まれる"余計なお世話"だ。
「ナマエにはね、素直になるのが一番だよ」
「……」
五条さんはナマエの髪に鼻先を寄せながら、俺に見せつけるように細い腰を引き寄せ、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
まるで「ナマエは自分のモノだ」とでも言いたげな言動に呆れてため息が出る。
「あ。でも、僕にお膳立てされても最後までヤりきれないヘタレな恵には、ちょ〜〜〜っと難しい話だったかな~! いやぁごめん! 無理言って!」
「あ゛?」
感情を殺しきれず、喉の奥から漏れ出た地這うような俺の声に、五条さんの腕の中にいたナマエの肩が怯えたようにビクリと跳ねた。
突如として掘り出された、蒸し返されたくない過去の記憶。
最悪なタイミングで心臓の奥を土足で踏み荒らされ、こめかみの辺りで血管が波打つ音がした。