第7章 愛の形
「お、伏黒発見」
必死に理性を繋ぎ止めている最中、俺に影を落とす形でパンダ先輩が隣に立った。
「…………」
「え怖。何キレてんだよ」
眉間に力が入っている自覚はある。だが、今はそれどころじゃない。
「俺なんかしたっけ?」
「……いえ、こっちの事情なんで」
「ほーん…ナマエ関連か?」
「…今その名前出すの、マジでやめてもらえますか」
不機嫌を効かせた声で告げると、パンダ先輩は「へいへい」とニヤけ面で頷いた。
全てお見通し、と言われているようでかなり腹立つ。
「ん〜〜?…………あ」
パンダ先輩が隣で何かを察したように呟いているが、俺は立ったまま目を瞑り、頭の中で脱兎の数を数え続けた。
一匹、二匹と、柵を飛び越える白い影を必死に追う。
そうしているうちに、どろりと濁った邪な波が少しずつ引いていく気がした。
あともう少しで、──そう思った瞬間。
「恵くん────!!!」
「は……」
幻聴にしては、あまりにも鮮明な声音。
驚いて目を開こうとした途端、凄まじい勢いで何かに突進され、脱力していた身体が大きくグラつく。
そして踏ん張る間もなく、俺は無様に地面に尻餅をついていた。
「いっ……てぇ、」
土埃の中、身体にのしかかる柔らかい重みの正体を確かめようと、ゆっくり目を開く。
するとそこには、乱れた髪をそのままに、困ったように眉を下げて笑うナマエの姿があった。
「お前……、」
「ご……ごめんなさい、勢い余っちゃって……」
至近距離で重なる、ナマエの体温。
ついさっきまで必死に数えていた脱兎の幻影は、一瞬にしてどこかへ霧散していった。