第7章 愛の形
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やっちまった。
ナマエが校舎へと逃げるように消えていくのを見届けて、ようやく重い自覚が追いついてきた。
また、言葉足らずでアイツを遠ざけてしまった。
独りよがりな沈黙がどれほどナマエを傷つけるか、その先でアイツがどれだけ塞ぎ込んでしまうのか、過去に嫌というほど後悔したはずなのに。
……ナマエを前にすると、どうしようもなく思考が濁って、感覚が鈍る。
(……アイツと組手してると、気が散んだよ、)
項を伝って流れる汗粒、口から盛れる荒い息、激しい動きの拍子に服の隙間から覗く白い肌。
訓練中だと分かっていても、邪な考えが脳裏を掠める。
壊れ物のように大切に扱うと決めたあの日から。
一度でも深く触れたら歯止めが聞かなくなるような気がして、ナマエに触れることを最小限に控えていた。
時折、物足りなさそうに唇を尖らせるアイツの表情には、とっくに気づいていた。
だが、その不満を解消してやりたい欲求よりも、
俺の一方的で身勝手な欲でアイツを壊してしまうことへの罪悪感の方が、ずっと重かった。
(………クソ、触りてぇ…)
俺の手が触れた途端、熱を帯びて赤く染まるあの頬に。
俺しか知らない、色気のある声を漏らすあの薄く色付いた唇に。
一度でも重なってしまえば、アイツが泣いて縋っても離してやれる自信がない。
今も、その柔らかな感触を思い出すだけで下腹部の奥が重く疼き出しているのだから、この予感に説得力が増す。
(……いや、真昼間から何考えてんだ、俺は)
内側に閉じ込め固く蓋をしていたはずの記憶が、熱に浮かされたように顔を出し始める。
しかし、すべてが溢れ出してしまう前に蓋を重ねてそれを無理やり押し隠した。