第7章 愛の形
苦しい気持ちを吐き出すように深く息を吐いてみたけれど、沈みきった心は少しも軽くならなかった。
仲直りしたい。
でも、もしも許してもらえなかったら──そう考えるだけで、胃の奥がひっくり返りそうな不快感に襲われる。
「ごっ、ごめん……!本気で困ってるのに、茶化すようなこと言っちゃって」
「いえ、…本当のことなので」
まだ数回しか顔を合わせていないのに、こんな重い相談をされて困っているのは乙骨先輩の方だ。
申し訳なさに身を縮めていると、乙骨先輩が頬を掻きながら、照れくさそうに言葉を繋いだ。
「あの……僕で良ければ、話聞こうか?」
「え…」
その柔らかな申し出に、今にも縋り付いてしまいそうになる。
でも、ふと脳裏を過ぎった大好きな人の顔を曇らせてしまうような気がして。
「すごく嬉しいんですけど、……恵くんが嫌がりそうだから、止めておきます。ごめんなさい」
深く頭を下げて、その申し出を断った。
「そっか……!うん、僕の方こそ出しゃばっちゃってごめんね」
私が気に病まないよう、即座に明るく笑ってくれる乙骨先輩。
その気遣いすら申し訳なくて、私は下げた頭を上げることができなかった。
「……僕にも好きな子が居たから、他人事に思えなくてさ」
「…、」
大切にしまっておいた思い出を、そっと引き出すような声音。
その慈しみに満ちた響きに、思わず息を呑んだ。
────知ってる。
初めて紹介された時、五条さんから聞かされた。
乙骨先輩への愛の大きさ故に──巨大な呪いとなって彼を縛り続けている、女の子の話。