第6章 堕神※
私は元々、凄く欲張りだった。
『お母さん、私、お外で遊びたいの!』
『ダメよ。穢れが伝染るから』
村で流行っていた玩具も、夏の夜空に咲く外の景色も、家族の腕の中で感じる温もりも、人の心も、無条件の愛情も。
全部欲しかったのに、…全部、許されなかった。
──神様だから。
──巫女様だから。
そう言われ続けて、欲しいと思う気持ちごと心を閉じ込め、人でいることを諦めかけたある日。
呪詛師──夏油傑によって、村中の人が殺された。
村は壊れて、人は死んで、
皮肉にもその瞬間、私の心だけが生き返った。
あの日から、神様なんて居ない、要らないと思って生きてきた。
元々、自分がそんな存在になれるなんて1ミリも思っていなかったし、なりたいと思ったこともなかったから、何とも思わなかったのに。
今、この瞬間は───その存在に縋ってしまいそうになる。
(…………恵くんが、ほしい)
私のお腹に添えられたその手で、沢山触れて欲しい。
頭が真っ白になって何もかも溶けて消えそうになるあの感覚で、人間でいていいんだって教えてほしい。
穢らわしいと後ろ指を刺されてもいい。
いつか憧れた、神子様になれなくてもいい。
冷たい目で、期待はずれだと突きつけられてもいい。
───私はもう、神様をやめるから。
…だから、恵くんに愛される資格だけが欲しい。
「……おねがい、」
掠れた声で零したそれは、恵くんが求めてた答えじゃなかったかもしれない。
…それでも。
「っ、」
「んっ……ぅ…」
熱い口づけと一緒に襲ってきた甘い刺激が背中を駆け上がって──これで正解だったんだと、優しく教えてくれた気がした。