第6章 堕神※
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布が擦れる音と荒い呼吸が、また、静かな部屋に落ちていく。
さっきと決定的に違うのは——息が苦しくなくて、心が不思議と軽くて、ただ目の前の熱に身を委ねてしまっている私自身だった。
「んっ…ぅ、」
「は………っ」
今の恵くんは、あの日の悪夢から私を救い出すためだけに触れているわけじゃない。
私という一人の存在を欲して、求めて、確かめるように触れてくれている。
その確かな情が、すぐ目の前にある余裕を失った瞳と、隠しきれずに火照った表情から痛いほど伝わってきた。
(すき……だいすき、)
もう二度と、失いたくない。
村のみんなみたいに、私の前からいなくならないで。
お願いだから、私の手の届かない場所へ消えてしまわないで。
ずっと、ずっと私の傍にいて。私のことだけを考えて、私だけを視界に入れていてほしい。
そんな身勝手な独占欲が、胸の奥でドロリと熱く溶け出す。
この想いを繋ぎ止めるために。
この人を失わないために。
──私が恵くんを、この手で守らなきゃ。
「…考えごと」
「っ、……してない、よ」
私の中の黒い感情を洗い流すように、恵くんの指が私の額を弾く。
ビクリと肩を跳ねさせた私を、恵くんは不満げに眉間に皺を寄せて睨んでいた。
「嘘つけ、顔に書いてあんだよ」
顔に?と首を傾げそうになったその瞬間。
「え……ひゃっ、」
服の隙間から滑り込んだ大きな手が探るように肌に触れ、ゆっくりとお腹の輪郭をなぞる。
予期していなかった直接的な体温に思考が真っ白になったのに、脳だけが甘い感覚を思い出し始める。
「あ、……ぅ、」
「……顔、真っ赤」
「っ…!!」
普段は口数の少ない恵くんが、余裕のない私をからかうみたいに言葉を重ねる。
翻弄されるがままに押し黙る私を見つめて、恵くんはお腹に這わせていた手を、ゆっくりと焦らすような速度で胸元へと滑り込ませた。