第6章 堕神※
返事を待つ間、時間だけが不自然に引き伸ばされたみたいだった。
視界に映るのは伏せられた睫毛と、微かに揺れる喉仏だけ。
次に聞こえる一言で、全部が決まってしまう気がして、息を詰めた。
────もし、違うと言われてしまったら。
私たちの関係は、もう後ろ向きにしか進めない。
そんな最悪の想像が脳裏をよぎって、視界が一瞬だけ暗くなる。
その瀬戸際に後悔が募り始めた、その時。
「…………ちがわねぇ、と…思う」
小さく、でも確かに返ってきたその言葉に、胸がいっぱいになる。
張り詰めていた糸が一気に緩んで、全身から力が抜けそうになった。
もう、溢れるこの気持ちを抑えなくてもいい。
そう理解した瞬間、堰き止めていた想いが熱を帯びて込み上げてくる。
「……よかった、」
「っ、」
私の視線から逃げるように再び顔を逸らそうとする恵くんを、頬に添えた両手で止める。
それでも視線だけは逸らされたままで、それが凄く不安で、悔しくて。
ちゃんと最後まで確かめないと、心が壊れてしまいそうで。
「……めぐみくん、」
小さく名前を呼べば、返事の代わりに視線が交わった。
その視線を辿るように、私は額を合わせて恵くんの顔に影を落とす。
──そして、その熱い唇に、自分のそれをそっと重ねた。