第1章 旅立ち
さっきまで静まり返っていた空気が、一気に不快な音を立てて揺れる。
「あ、アレを祓った…だと!?あの娘がか!?」
「あの呪いは特級相当と聞いた。そんな出任せ……」
「出任せかどうかは、あの場に出向いた術師に聞けば良い」
言葉を遮るようにして、いけ好かない声が割って入る。
まあ、この場にいる連中全員、僕は嫌いなんだけどさ。
「伊地知と貴様があの娘を保護した後、特級呪霊──《姦姦蛇螺》の肉体の一部を回収しに向かった窓と、現場に到着した一級術師からの報告書だ」
ぺら、と紙を捲る音。
それを聞いた瞬間、自然と眉間に皺が寄った。
(……やっぱ、消えてなかったか)
「確認された残穢は二つ。ひとつは夏油傑のものが微量に。……そしてもうひとつは、村中に蔓延するほど膨大で強力な残穢だ。五条悟のものとは明確に異なる残穢だと報告を受けている」
「とか言って、僕のだったりして」
「有り得んな」
軽く冗談めかして言ってみるも、即答。
どうしてそう思うのか聞こうと口を開く前に「伊地知からその報告はない」と続けられて、言葉を飲み込む。
……あーあ。
こんなことなら伊地知に僕が祓った事にしろって言っとけばよかった。
今さら後悔しても意味はない。
僕はポケットに手を突っ込んだまま、長く息を吐いた。
「で、そこまで分かってて、なんで僕を呼んだんです?お得意の嫌がらせ?」
「あの娘の術式の件だ。貴様にしか分からぬ事を聞くと言っただろう」
言ってねーよ。
そう思ったけど、ここで突っ込むと話が長引くだけだ。
僕は適当に「はいはい」と相槌を打って、「僕にもわかりませ〜ん」と軽く返し、そのまま会議室の出口へ向かう。
「五条悟!!質問に答え……」
「良い。……そのうち分かる事だ」
……そうそう。そのうち、嫌でも分かるよ。
だから、それまでは大人しくしてな。
の術式を知ったらお前ら全員、目を血走らせてに手を伸ばすでしょ。
年齢や気持ちを少しも考えずに、それに不釣り合いな任務に出向かすでしょ。
「まだ死なせるわけにはいかないんでね」
はこれから、もっと強くなれるんだから。