第6章 堕神※
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何度唇を重ねても、髪を撫でても、ナマエの涙が止まらない。
指先に伝わる震えも、息を殺す癖も──その全部が、あの日の残滓のように感じられて、胸の奥が焼けるように痛んだ。
──あの男。狂った欲でナマエを壊した、あの最低な存在。
思い出すだけで内臓が煮えくり返る存在が、今もコイツの中に居座っているのかと思うと、反吐が出るほど虫酸が走る。
「……早く、忘れろ」
「っ、」
キスを止め、ナマエの肩に額を預け、ふと零れた本音は自分でも驚くほど掠れていた。
縋るみたいな仕草になってしまったことに気づいて、無力感に奥歯を噛み締めた。
(……あんな奴を、長々とお前の中に居座らせんな)
今こうして触れているのが俺だという事実だけで全部を上書きできるなら、俺は何だってする。
俺が触れている瞬間だけでもいい。
だから、今は、他の男のことなんて考えるな。
「………触るぞ、」
「え…っ、ぁ、」
未だ迷いつつある自分を押し切るように低く言い聞かせ、返事を待たずに服の隙間へ掌を滑り込ませた。
下着越しに感じる柔らかな感触を、確かめるみたいに少しだけ強く掴み、もう片方の手を背後へ回してナマエの身体を縛る金属のフックをプツンと弾く。
その瞬間、ナマエの身体がほんの一瞬だけ強ばるのを、俺は見逃さなかった。
「っ……、や、」
「…嫌か?」
言葉では確認の形を保てていたが、背中に回した腕を離す気なんて最初からなかった。
膝の上に乗ったナマエを見上げ、濡れた瞳を無理やり捕まえると、ナマエは数回の瞬きを残して俺から視線を逸らした。
「………続けるぞ」
自分に都合のいい沈黙を免罪符にして、剥き出しになった肌へ直接指を這わせる。
ほんの少し芯を持った突起を摘んでやると、ナマエの身体が逃げるように、ぴくりと跳ねた。
「んッ……ぁ、っ」
俺の行動ひとつひとつに、過敏に反応する様子が愛おしい。
(一生、俺にだけ反応してりゃいいのに)
そう思いたい衝動が胸の奥で膨れ上がる。
けれど同時に、これが俺だけのものじゃなかった可能性が、黒い感情となって渦を巻いた。