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【呪術廻戦】呪いの嫁入

第6章 堕神※


瞬きひとつせず、呼吸の乱れもなく。
抱えられた人形も、彼の一定な呪力を受けて安らかに眠ったままだ。

まるで、今目の前に流れている扇情的な映像が ただの無機質な風景であるかのように──恵くんの表情は凪いでいた。


(……なんで、平気なの)


私は恵くんと視線を合わせるだけで昨日の体温を思い出して、逃げ出したいほど恥ずかしくなってしまうのに。

恵くんは私を見てもいつも通りで、おまけにこんなに恥ずかしい映像を突きつけられても尚、顔色ひとつ変えないなんて。


(…これが、俗に言う"脈ナシ"……?)


昨日、五条さんの言う"男としての好き"の意味を理解するために、夜通しネットを徘徊して、ひとつの結論に至った。


───私は、恵くんを一人の男の子として好き。


恵くんをかっこいいと思ったり、一緒にいるとドキドキしたり。
挙句、他の誰にも彼を触らせたくないと、そんな醜い独占欲まで抱いてしまう。


世間では、こういうやり場のない感情を『恋』と呼ぶらしい。


そして、こちらが必死に心臓の音を隠しているのに対して、相手に微塵も表情の変化が見られない時。

それをネットの相談サイトでは、『脈ナシ』と切り捨てられていた。


この場合、私に異性としての興味がこれっぽっちも無いから、
同じ空間で何が起きようと、恵くんがドキドキすることなんて無いのだろう。


昨日、あんなに優しくしてくれたのは
私を女の子として見ていたからじゃなくて、ただ手のかかる"幼なじみ"だと思っていたから。


その事実を自分で自分に突きつけた瞬間、ぎゅ、と胸の奥が冷たく縮んだ。


(こんなに苦しくなるなら、……知らないままでよかったのに)


気付かされなければ、ずっと、あのまま隣にいられたのに。


(…五条さんの、ばか)


頭の中で飄々と笑う五条さんに毒づきながら、耐えきれず胸元の人形に顔を埋めた。

閉じた瞼の裏で、昨晩ネットの海のどこかに書かれていた"初恋は実らない"という呪いのような言葉が、ハッキリとした残像となって浮かび上がった。
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