第6章 堕神※
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最初は、なんてことない青春コメディの映画だと思っていた。
……それなのに。
『貴方が好き……!』
『ああ、……俺も』
吐息混じりの告白とともに、画面の中で二人の唇が重なる。
理解するよりも先に、その光景が視界に飛び込んできて、思考が一拍遅れて固まった。
(────え、)
教室内で漫才を繰り広げる学生男女のお話だと思って、時折くすりと笑みを零しながら見ていたはずなのに。
それなのに、どこからどうしてこんな展開になったのか、全っ然、分からない。
事前情報が何ひとつ無かったせいか、あるいは元々そういう作品だったのか。
二人の関係が"漫才コンビ"という所しか把握できないまま、唐突に画面は熱を帯びた場面へと切り替わり、私の頭はパンク寸前だった。
『ん……っ、……はっ、』
『……はぁ、……ん、』
スピーカー越しに響く、生々しい水音。
夕焼けに照らされた室内で男女が舌を絡め合う姿に、昨日の自分が残酷なほど重なって見えてしまう。
なんで、今、私たちはこんなものを見せられているんだろう。
そう考えた瞬間、とある白髪の人の、あの楽しげな顔が脳裏に浮かんだ。
『あ、今日の映画は僕が選んどいたから! そのまま再生しちゃってね〜』
今朝。
五条さんは、起きたばかりの私に挨拶よりも早くそう告げていた。
妙に上機嫌だとは思ったけれど────まさかこんな悪趣味な仕掛けが用意されていたなんて。
(五条さんのバカ!! しばらく口きいてあげないんだから……っ)
ぎゅう、と胸元の人形を抱きしめる腕に自然と力が籠もる。
逃げ場を失った視線をどうにか誤魔化そうと隣を盗み見ると、恵くんは冷静な横顔のまま、微動だにせず画面を見つめていた。