第1章 旅立ち
「強くなって、君の村の人たちと同じ運命を辿る人を減らすんだよ」
「っ、」
「そしたら少しは気持ちも軽くなるんじゃない?」
「………わ、たし…は」
服を掴んでいた指の力が、ゆっくりと緩む。
私は五条さんの腕の中で、自分の両手を見下ろした。
小さくて、何も守れなかった手。
何ひとつ掴めなかった、弱い手。
この人について行けば。
この手は、いつか誰かを守れるくらい、強くなれるのだろうか。
もし、ほんの少しでも────その可能性があるのなら。
「…つよく、なる」
ぎゅっと両手を握り、拳を作る。
五条さんはふっと鼻で笑って、どこか楽しそうに言った。
「うん。僕に負けないくらい強くなって」
そう言って、彼は村の出口へと足を進めていった。