第5章 オーバーライト※
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ナマエの家の前。
鍵を開けて扉を開くと、散々見慣れた白い頭が視界に入って思わず小さく息を吐く。
(…………最悪だ)
ラフな私服にサングラス。
玄関先に陣取る大男は、俺とナマエ、
そして数秒前まで繋がれていた手に一瞬だけ視線を落とし、意味ありげに口角を吊り上げた。
「あっれぇ〜? なんで恵がいんの??」
わざとらしく間延びした声音。
その軽さが、さらに俺の神経を逆撫でする。
そしてその声に弾かれたように、俺の半歩後ろにいたナマエが顔を上げ、慌てて俺の横をすり抜けて玄関へ滑り込んだ。
「五条さん……!暫くは帰れないって言ってたのに、なんで?」
「僕の命より大事なナマエが怪我したって連絡あったから、諸々放って有給とったの♡」
その言い草に、なぜか伊地知さんの疲れ切った顔が脳裏をよぎる。
どうせ面倒な仕事を全部押し付けてきたんだろう。
「………過保護」
「お前も大概でしょ」
「…」
サングラスの奥から、射抜くような視線が俺に向けられる。
冗談めいた空気の裏で、五条さんは全てを見透かすような目で俺を捉えていた。
「ナマエ。ケーキ買ってきたから、お茶淹れてくれる?」
「え……あ、はい、」
頭をぽんと撫でたあと、五条さんはナマエをこの場から逃がすように指示を出す。
そしてナマエは不思議そうに頷いたあと、脱いだ靴を揃えてからパタパタと部屋の奥へと消えていった。