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アブシールの英雄

第9章 第九話


ーーー収容所別闘技会まで、あと半年。



ユリウス、ソルト、ジザベル、クラシリカは、特別休暇をもらい、親睦も兼ねて四人で砂漠の町をブラブラすることにした。

「アブシールは砂漠の国ですから、馬やラクダは生活必需品となっています」

町を回りながら、クラシリカは詳しく説明してくれる。

「そして、ここは42オアシス。正式名、第42オアシス国立指定駅」

四人は、乗っていた馬から降りて、馬小屋につないだ。

「…42は、思った以上に小さな駅だな」

ユリウスは事前に見てきた地図を再び広げながら言う。

「そうですね、水源が小さいことが大きいですね。駅を大きくしても、それだけ人が暮らせるほどの水の量がありません。大河沿いには大きな駅も多いです」

そう言って、クラシリカは大河沿いのオアシスを指さす。

そうして地図を二人で見ていると、不意に地図に影ができた。

ソルトかジザベルだろうと思って気にせずにいると、

「「って言うか!誰!!?」

と、ソルトとジザベルが同時に叫んだ。

え?とユリウスは地図を畳んでそちらを見た。

「あたい?

あたいはシンルー。旅芸人さ」


黄色いピッタリとした民族衣装を着た、お団子頭のこんがり褐色の少女がそこには立っていた。


「そうなんだ…綺麗な人だなぁ」


ソルトはなぜか納得してシンルーに見とれていると、


「じゃなくて!!!」

とジザベルに素早く突っ込まれた。

「君は、なぜここにいるんだい!?俺たちはまだ先に進みたいんでね。芸は今はいらないんだ」

その言葉にシンルーは、

「なぜ?

なぜなんてそりゃ…あたいはこのお方に運命を感じてしまったからさ…」

そう言って、ユリウスの腕を掴んだ。

「「……」」

ジザベルとクラシリカはあきれたような視線をシンルーに向ける。

しかし、ソルトだけは、


「ユリウス、お前…

またかよ!!」

とユリウスに詰め寄る。

「俺がこましたみたいな言い方するな。普通に歩いてただけだっただろ、今まで」

ユリウスはそう言って、近寄ってきたソルトを押し戻す。

「ああん。声も涼やかないい音だね、私のフィフス」

シンルーは、ユリウスの肩に首を乗せて、近くで見つめてくる。

「(フィフス…?)お嬢さん、どうやら誰かとお間違いのようです。俺の名はユリウスだ」
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