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アブシールの英雄

第10章 第十話


「アンタ自身が己をどう思おうと構わない。だが、従う部下はどうだ?

そのように命を粗末にする将軍に仕えるのは嫌だろうし、アンタを敬愛する部下はそれを聞いてどう思う?俺は聞き捨てならないね」


ジザベルの言葉に、ムラサメは眼を閉じた。


「…そうか。難しいな…

俺には今、この命にこれっぽっちの意味も見いだせないと言うのに」


「グリフィスもアンタもさ、なんでそんな卑屈なわけ!?


『俺はここで生きてるんだぜ!!!』だけで十分だろ? だってそれだけはどこであろうと変わらないことなんだから!」


ムラサメの言葉は、ソルトには理解できないくらいに卑屈に感じたようだ。


「そうか。

今は暗闇で何も見えない。

だが、『俺はここで生きている』以外の何物でもないな」


ムラサメはそう言って、また遠い目をした。


(危うい奴だ…)


ユリウスはムラサメの様子をみて、そう感じた。
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