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アブシールの英雄

第5章 第五話


「目を覚まされましたか?ご気分はいかがですか?」

カーテンが風でヒラヒラと舞っている。

窓の前に一人の女性が立っていた。

彼女は心配そうにユリウスを覗き込んでいる。


「…ここは…いや、貴女は?

ここは収容所のはず。貴女のような女性がいていい場所ではないところですが…」

ユリウスは飛び起きて、混乱したように言う。

「ふふふ。私はシンフォニア。

ここにはあの方がいるから…」


彼女…シンフォニアは歌うような声でそう言った。

あの方…?

ユリウスが聞き返そうとした時、

「お、ユリウス、目ぇ覚まし…し、シンフォニアさん!!こんなところで何をされてるんですか!!?」

ハリスはユリウスに声を掛けるも、立っていたシンフォニアに驚いて、声が裏返っていた。

ゆるく三つ編みにした髪、優し気な微笑み、歌うような声。

ユリウスのシンフォニアの第一印象だ。

「こんにちは、初めまして。

私はだいたいここにいますわ。あの方のお世話をする為に」

そう言って、彼女は窓のほうを向いた。

「じゃあ…やっぱり、噂は本当だったんですね…アウグスト…グリフィス様が若い奥さんもらったって話!」

ハリスは興奮した様子で、シンフォニアに聞いた。

「まあ…奥さんだなんて…おこがましい。あの方は本国に奥様がいらっしゃいます。私が勝手に…。
…押しかけ女房と呼ぶのも気が引けるくらい」

シンフォニアはハリスの方を向いて、一息に言った。少し顔が赤いようだ。

(うらやましすぎる~)

とか、ハリスは考えていたとか。

「でも、ここは危険ではないか?こんな血気盛んな男ばかりのところに」

ユリウスはベッドに腰かけるように座り、シンフォニアに言う。

「…あの方にも止められます。…それでも。私は少しでも長くご一緒したいのです。

戦に出る御身、明日何が起こるかもわからない。

だったらせめて、悔いが残らないように、その姿を目に焼き付けていたい」


祈るような声で彼女は言った。

(そのような気持ち…俺には理解できない…。
なのに、どうしてこのように…この人に惹かれるのだろうか…)

ユリウスはジッとシンフォニアを見つめながら、考えていた。





「シンフォニア、すまなかった」

しばしの沈黙ののち、アウグスト…グリフィスが現れた
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