第1章 初日
ベッドの縁に座り込んだカムクラから視線を外さないようにしながら、訥々と話しかける。
『正直……君の出現は想定外だったんだよね。だから、こちらとしては君をどう扱っていいのか分からなくて……。その……私たちに協力してくれるとすごく助かるんだけど。』
「……」
無言で向けられた視線に、希灯は萎縮する。
下手に出るような物言いしかできない自分が情けない。
威嚇するつもりで来たのに、これじゃあ抑止力がないこと教えているようなものだ。
『ダメそう……?。』
逃げ出したい気持ちを堪えながら訊くと、カムクラは静かに首を横に振る。
「いえ。特にどうしたいとかはないので。成り行きに任せます」
『そ……そっか。とりあえず、みんなに暴露しないこと、危害を加えないこと……あと、希望のカケラをちゃんと埋める努力をすることさえ守ってくれたら、ある程度君の自由に過ごしてくれていいよ。今のところ伝えたいのは、それだけ……。』
言いながら後ろ手でドアを開け、警戒しながら外に出る。
『じゃあね、カムクラくん……おやすみ。』
「はい。おやすみなさい、誉稀」
ドアが閉めながら言う希灯に、カムクラがそう返した。
『(よかった。何もされなかったし、敵対的でもなかった……)。』
自分のコテージに向かいながら、安堵の溜め息を吐く。
ふと、足を止めカムクラのコテージに振り返った。
『(…………"誉稀"?)。』
何かが引っ掛かるような感覚に、首を傾げる。
『(……カムクラくんって下の名前で呼ぶ派なんだ?。)』
意外だ。そもそも私の名前を把握してたんだ。
希灯は前に向き直り、まっすぐ自分のコテージに戻る。
それから数時間後の就寝前、希灯は電子生徒手帳で全員のプロフィールを確認することにした。
『んーと……。』
カムクライズルの項も改めて見てみる。
『超高校級の希望……A型……。』
希望の才能だなんて。定義があやふやだ。
それにそんな大層な才能を冠するような生徒が希望ヶ峰学園に在籍していたのなら、全生徒が注目したはずだ。希灯の記憶のどこにも、そんな生徒の存在はない。
不可解な記述は他にもあった。