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君がいた常夏

第9章 終結


島生活の続行は現実的じゃない。
しかしこのまま何事もなく修学旅行を終わらせると肝心のカムクラは消える上、希灯はやったことに対する罪も償わされてしまう。
八方塞がりだった。
「……結局あなたの要望は僕への執着でしかないんですから、ここで殺すのが全員にとっての最善かと」
『相変わらずの合理主義だね。昔の私は……君のそんなところも好きだったりしたのかな?。』
寂しげに眉を下げ、希灯はカムクラにまた視線をやった。
静かに見つめ返すカムクラの目には、何の憐憫も、何の殺意も感じられない。
『まぁ、いいや。他でもない君が島生活を拒むんなら……それが目的で来たならさ……ひと思いにやっちゃってよ。』
諦めたようにそう言って、希灯はストンとベッドに腰を下ろした。
そして目の前に立つカムクラを控えめに見上げる。
『……あんまり痛くないのがいいな。』
「わかりました」
カムクラは希灯に近づき、首筋にそっと触れた。
総頸動脈の位置に正確に指を置き、過不足なく力を加える。
『あっ、待って。殺したあとでいいからさ、私が死んでからでいいからさ……最後に抱き締めてくれない?。』
首筋に添えられたカムクラの手を優しく掴みながら希灯が制止をかけた。
「……」
それに応えるように、カムクラもベッドに座り、希灯の背や首に手を回す。
『あ……先にしてくれるんだ。ありがとね。』
頸動脈の圧迫が再開される。
希灯は抵抗せずにマジカルステッキを持ったまま、自らもカムクラの背中に手を回す。
『はは……こんなときなのに、なんだかドキドキする。』
包まれているような安心感を覚え、希灯ははにかみながら微笑む。
「当然です。頸動脈を圧迫してるんですから」
『ううん、違うよ。このドキドキの正体は……きっと…………。でも、君はどうせ……ツマラナイって、言うんだろう、ね……。』
言葉が途切れていく。声も小さくなっていく。 『…………。』
希灯は最後に、何か言おうと口を開いた。
しかし唇も目もゆっくりと閉じていく。
その最中、一粒の涙が希灯の目尻から頬に伝い落ちる。
暗闇。静寂。
その瞬間、ただただ肌に触れる温もりだけが希灯の全てだった。









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