第9章 終結
希灯がコテージに戻ってから数分後、チャイムが鳴った。
『はーい。』
ドアを開けると、そこにはカムクラが立っていた。
いつもの無表情で希灯を見下ろしている。
『来たね。さすがに早すぎない?。』
言いながら、希灯はカムクラを部屋に招き入れる。
『説得……じゃなさそうだね。まあ、最後にちょっと話そうか。』
ステッキで床に散らかった資材や工具を端に寄せ、申し訳程度のスペースを作る。
『ねぇ、この修学旅行が終わったら君は消えちゃうんだよ。イズルくんはそれでいいの?。……そこまでしてみんなを外に出したいの?。』
「いいえ。彼らは関係ありません。どうでもいいことなので」
『じゃあ何……?。そんなに私と島生活続けたくなかったの……?。』
「それもどうでもいいですね」
関係ない。どうでもいい。であれば何故希灯の構想を拒むのか。
カムクラの言葉に希灯は怪訝そうな顔をする。
『じゃあさ、お願い……私のために生きて。』
「お断りします。島に居続けたって、何にもなりませんからね」
『イズルくんに限っては……島から出た場合でも何にもならないじゃん。私はそれがイヤ。』
可能な限り、新世界プログラムを停滞させたい。
カムクラが消える瞬間を少しでも先延ばしにしたい。
『君が望むなら…………このまま卒業試験に移行して、日向くんを留年させることだってできるよ。』
言いながら、ステッキを握り締める。
その声はひどく弱々しかった。
「したくもないことを提案してどうするんですか?」
『……ほ、本気。』
「少しでもその気があったら、あなたは僕の了承なく既にそうしているはずです」
溜め息でも吐くような口調で、カムクラは腕を組む。
希灯は後ろめたくなって、視線を床にやることしかできなかった。
「……ずっとこの仮想世界に閉じ籠るのは無理です。早い内にきっと破綻します。あなたを害さずにプログラムを終わらせる手もないわけではありませんが、現実世界に戻ったところであなたは壊れるでしょう」