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君がいた常夏

第8章 逸脱


「希灯、ちゃんと説明をしてくれ。さっきから何のつもりなのか、こっちにはさっぱり分からないんだ」
十神が顔をしかめながら言う。
その言葉に、希灯は少し考えるような素振りで首を傾げた。
『……説明するの面倒だな。仮想世界とか、この修学旅行の目的とかも話さなくちゃいけないし。』
一同の周りを周遊するように歩きながら希灯が呟く。
「め、面倒……?」
『話したところで受け入れられる?。納得してくれる?。ここから出ようとしないって約束してくれる?。』
不安げに指折り数えながら希灯が歩き続ける。
新世界プログラム。絶望の残党。未来機関。
希望ヶ峰学園の入学初日に拉致され平和な南国に軟禁されているだけ、という認識の彼らにカムクラの消失を説明するには事情が複雑すぎる。
『まぁ、詳しいことは後でウサミ先生からでも訊いてみてね。全部知ってるし。私からの要望はただ、全員でこの島で暮らし続けることだけ。たったそれだけでいいから。』
困惑するみんなに、希灯は眉を下げながらそうお願いする。
『あ……そうだ。もしどうしてもこの世界から出たいならさ、1つだけ条件を作ってあげるね。』
ふと、希灯が立ち止まった。
それから全員に視線を向ける。
『この私……"希灯誉稀を殺すこと"。方法は何でもいいし、誰でもいいよ。ただ私の命を奪うだけ。簡単だね?。』
「しょ、正気か……?」
「何故そんな条件を提示するんだ。希灯にとってデメリットしかないんじゃないか?」
「キミを襲うこと自体が罠だったりして……」
呆気らかんと言う希灯に、信じられないような心地でみんなが口々に言う。
『なにも難しく考えなくて大丈夫。私が死んだら卒業試験なしで、当初の予定通りにみんなを卒業させてあげるからさ。』
卒業の権限の保持者であり卒業を止めている張本人である希灯を排除すれば、停滞は解除される。
至極単純な話だ。
『私はただ……消える人を置いていきたくないだけ。置いていかずに済むのなら、どんな結末でもいいってだけ……。』
失うのが怖いから、失う前に自分が終われば悲しまなくて済む。
『(我ながら自己中心的……。でももう後戻りできないや)。』
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