第7章 保留
『い、嫌だ……。』
痛い。苦しい。
『いやだ……もう、希望のカケラ集めたくない……。』
言うや否や、涙が溢れた。
思わず顔を伏せる。
スカートに数滴の大きな染みが広がった。
「なっ……泣くほど? てか、なんで集めたくないんだよ」
涙を拭う希灯に、近くに座っていた左右田がやや驚きながら言う。
「あと埋まってないのあんただけなんだからね!わたし達の足引っ張んないでくれる?」
「さすがに島生活も飽きてきたって言うか……家のことも心配だし、そろそろ帰りたいんだよね」
「貴様、協調性に欠いているぞ。理由は知らんが今日からでも彼奴らとの戯れを再開するべきだ」
集めたくない、と言った希灯に周囲が口々に不満をぶつける。
言うことは尤もだった。
『…………ごめん。けど……でも、だって……。』
希望のカケラを満たしたくない。
修学旅行を終わらせたくない。
カムクライズルを消したくない。
「わかってんの?わたし達は謝罪とか言い訳じゃなくてさー、行動で示してほしいんだよね」
残りのカケラはあと10個。
それを埋めきって51日目に突入すれば、もう二度と会えなくなる。
逃れられない、永遠の別れが来る。
『うっ、うぅ……ぐすっ。い、イズルくん……。』
拭えども拭えども、涙は止まらなかった。
終わらせなければいけない。
未来機関員として、監視者としてそうしなければならない。
分かっている。分かっている。分かっている。分かっている。
「希灯さん、こっち来て先生と話しましょう。みなさんは食事を続けてくだちゃい。さ、希灯さん……行きまちょうね」
異変に気付いたウサミがレストランにやってきた。
ウサミに手を引かれ、希灯は鼻をすすりながらレストランを出ていく。
その間、カムクラは希灯たちの件に我関せずで窓辺で1人優雅に朝食を摂っていた。