第7章 保留
「希灯さん、落ち着きまちたか?」
ウサミに連れられて戻った自身のコテージ。
差し出されたハンカチで涙を拭い、希灯は震える手で握り締める。
『ありがとう先生……ごめんなさい。』
ベッドに座らせられ、その目の前にウサミが立つ。
「カムクラくんのこと、辛いでしょうが……回避できないことなんでちゅ。あちし達の目的は、みなさんの希望のカケラを埋めきって、その過程で得られた平和な島での楽しい記憶を現実世界の脳に上書きすること。あちし達の使命をどうか失わないで……」
言いながら、ウサミが希灯の手をそっと握りしめる。
声はどこまでも優しくて、幼児を宥めすかすような口調だった。
『わかってるよ……でも……。』
希灯の目からまた涙がボロボロ落ちていく。
それを拭いながら、悔しそうに歯を食いしばった。
「カムクラくんとのお別れはとても悲しいことでちゅが、それを理由にみなさんの輝かしい未来を閉ざすわけにはいきまちぇん。希灯さん、わかってくだちゃい」
『…………。うん……。』
このままカムクラが消える運命を看過したくはない。
けれどこれ以上修学旅行を停滞させるのは難しそうだ。
希灯はただ頷いて返すことしかできなかった。