第1章 初日
『うーん。何かのバグかな……仕様通りに出力された方はどっち?。』
アバターの姿や記憶は、被験者たちの入学時のものになっているはず。
超高校級の絶望になる前の、希望ヶ峰学園に足を踏み入れる直前の状態が反映されているはずだ。
「今ミナサンと遊んでいる方……日向クンでちゅね」
『ってことは……。』
視線を波打ち際から少し離れた木陰に移す。
まだ、さっきと全く同じ姿勢で座っている男子が見えた。
「あの男の子は入学時の姿じゃなく……現実世界の姿そのままでここにいるみたいでちゅ」
『現実世界のまま?。そんな、まさか……!。』
絶望の残党。
イヤな可能性が脳裏をよぎった。
平和な島生活のシミュレーションに、超高校級の絶望が紛れ込んでしまったことになる。
このままではプログラムの目的が果たせなくなるのは想像に容易い。
『い、今のうちに無かったことにした方がよくない?。みんなに被害が出る前に何とかしなきゃだしさ。』
「そ……それがでちゅね、あの人も生徒の1人としてカウントされてるせいで……あちしでは手が出せなくなってまちゅ」
それを聞いて、希灯は電子生徒手帳を取り出して通信簿を確認した。
生徒の一覧が表示される。その中にはウサミの言う通り、視線の先にいる髪の長い男子の項目があった。
『カムクラ、イズル……。』
本当に生徒として修学旅行に参加させられているみたいだ。
どうしようどうしよう、と焦りながらウサミがマジカルステッキを握りしめる。
修学旅行のルールには「引率の先生は生徒に直接干渉ができない」という決まりがあった。
ステッキを使ってアバターを消したりすることは不可能らしい。
『でもこのままにはしとけないよね……。今は大人しくしてるみたいだけど、なんかヤバいこと企んでるかも。』
「そ、そうでちゅよね。ひとまずカムクライズルと他の生徒たちを極力接触させないよう、あちしが誘導しつつ50日間を……」
『いや、待って。それ無理かも。』
通信簿の画面をウサミに見せる。
『生徒の1人ってことは……希望のカケラを集めなきゃいけない。あの人もみんなと交流する必要がある……。』
カムクライズルの項目にも、希望のカケラの空きが用意されていた。