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君がいた常夏

第5章 欲望


『(ヤバ……死ぬ……!)。』
息が出来ないまま慌てふためいていると、すぐに引っ張り上げられる感触があった。
水面に顔が出る。
軽く咳き込みながら目を開けると、カムクラに両脇を抱えられていた。
「全く大丈夫には見えませんが」
『ごめん……。ありがとう。』
溜め息でも漏らすような口調で言われ、希灯は申し訳なさそうにそう返す。
「溺れたときは平泳ぎの要領で手足を動かしなさい。決して無闇にバタつかせないように。……平泳ぎはできますよね?」
『で、できる……はず。』
平泳ぎすらできるかどうか疑われている。
実際に溺れているのを助けてもらったばかりなせいで強めに言い返すほどの自信がない。
しかも、足がつかないことに気が付いたせいで先程より明らかに身体が強張っていた。
自分を抱えているカムクラの腕から手が離せない。
『浅いとこまで戻るの、一緒に来てほしい……かも。』
「わかりました」
カムクラに横についてもらいながら陸に向かって泳ぐ。
情けないフォームを見守られながら何とか浅瀬まで戻ってきた。
『ありがと……もう大丈夫だよ。』
戻っていいよ、と希灯が視線を海に向けるもカムクラは首を横に振る。
「十分泳いだので。別のことをしましょう」
『そっか、じゃあビーチボール持ってくるね。』
いそいそと海から出て、先ほど置いた荷物のところからビニール製のボールを持ち出す。
直射日光のせいで中の空気が膨張してパンパンだ。表面もそこそこ熱い。
それを持ってカムクラのところまで戻る。
『……そういやビーチバレーってやったことないや。ルール知ってる?。』
「知ってますが……別にルールを把握する必要はないでしょう。そもそも人数すら足りてませんし」
まだ浅瀬にいるカムクラに向かって適当に投げると、カムクラは片手で弾き返してきた。
『キャッチボール的な感じでいっか。』
「定義としてはラリーですね」
カムクラに投げ返しつつ、希灯も浅瀬に入っていく。
数メートルほど距離を取ってビーチボールの往復を繰り返す。
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