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君がいた常夏

第5章 欲望


各自のコテージで水着に着替えてから砂浜に移動する。
さすがにスク水一丁で舗道を闊歩するのは抵抗があって、希灯は上にジップパーカーを羽織っておいた。
『……誰もいないね。』
自分たち以外にも泳ぐ約束をしているペアを何組か見かけたはずだけれど、人影はない。
「おそらくチャンドラービーチの方に行ったんでしょう。あっちの方が設備も整っているようですし」
『どうする?。人気な方行く?。』
「いえ、別にこっちで構いません」
カムクラが言いながら波打ち際に向かって歩いていく。
素足で踏む砂の熱さに苦戦しながら希灯はそれに付いていった。
『何しよっか。一応ビーチボールとかスコップとか持ってきたよ。』
「適当に泳いでみます」
そのままカムクラは海に入っていく。
『じゃあ、私もそうしよっかな。』
荷物やパーカーを濡れない場所に置いてから、希灯もカムクラの後を追う。
『待ってー。』
ザブザブと波を掻き分けながら進む。水温も程よく、透き通っていて綺麗だ。
カムクラはかなり先を泳いでいる。
膝、腰、腹、肩……段々と希灯の身体が海に浸っていく。
歩くより泳ぐ方が動きやすそうだ。
希灯は不慣れなクロールを繰り出しながらカムクラの方へ泳いだ。
『(海に入って泳ぐなんて、何年ぶりだろう)。』
現実の世界では汚染されている可能性があるから泳げないし、そもそも海ではしゃげる程ヒマじゃない。
童心に帰ったようなつもりで泳いでいると、遠くまでいっていたはずのカムクラに脇腹を掴まれた。
『!?。ど、どうしたの……っ?。』
ビックリして泳ぐのを止め、希灯の身体を掴んだままのカムクラに訊く。
「……ああ、いえ。てっきり溺れているのかと思って」
心外だ。泳いでるようにはとても見えなかったらしい。
『だ、大丈夫なんだけど。』
「そうですか。クロール……下手ですね」
そう言ってカムクラが希灯から手を離す。
『……ッ!!。』
泳ぐのを止めていたから希灯の身体はそのまま沈んでいった。
足がつかないくらい深いところまで来ていたらしい。
希灯は焦って手足を動かしたが、水面まで浮上することはできなかった。
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