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君がいた常夏

第4章 推測


夕食の後、プールサイドでコテージに帰る最中のカムクラを見つけた。
声をかけるか迷ったものの、思いきって希灯は駆け寄る。
『カムクラくん、ちょっといい?。』
「ええ」
立ち話も何だし、とプールサイドに設置されたビーチベッドに2人で腰掛けた。
辺りはすっかり暗くなっていて人影もほとんどない。
『えっと、澪田さんとか真昼ちゃんから聞いたんだけど……カムクラくんが私のこと下の名前で呼ぶのって、君が私にそう呼ぶよう頼まれたからって答えたらしいね。でもそれって何かの間違いじゃない?。私、言った覚えないんだけど……。』
「事実です。気に入らないなら呼び方を変えますが?」
眉1つ動かさずにカムクラが返すのを見て、希灯は少し俯く。
『いや、変えなくていいよ。知りたいのは記憶の食い違いについてだけ。……君の言ったことが嘘じゃないってのは信じていいんだよね?。』
「ええ」
『…………。』
希灯は俯いたまま、額に冷や汗を浮かべた。
『私の記憶も……弄られてるのかも。』
「そうでしょうね」
強ばった口調で呟いた希灯に平然とカムクラが言う。
不思議に思うところはいくつかあった。
被験者の姿は全員分知っているはずなのに初日の時点でカムクラに見覚えがなかったり。
叔父との話を教えてもらった時もそうだ。思い出せなかったものの、叔父が助けられたという件の友人をカムクラも知っている前提であるかのように話そうとしてしまったり。
どうやらカムクラに関する記憶だけがピンポイントで抜かれているらしい。
自分まで記憶を消されるなんて話は聞いていない。ただただ理不尽に感じる。
『私、監視者なのに……。』
「必要があったから弄られたんでしょう」
『そう……かな、……そうかも。』
被験者たちは希望側に更正させるために絶望の残党だった頃の記憶を奪われている。
自分の記憶も、監視者としてプログラムに携わる上で弊害になる可能性があったから奪われたんだろう。
『……とりあえず言えることは、私が自分から下の名前で呼ぶように言ったってことは……それは信頼してるか、ものすごく仲良くなりたいって思った相手……のはず。』
自分は滅多に男子との距離を詰めない。基本、関心のない相手には何も求めない。
希灯は過去の自分のカムクラへの対応を聞いて、そう確信を持つ。
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