第3章 前提
「……塔和シティであなたの叔父に会いましたよ」
『えっ、ほんと!?。』
予想もしなかったカムクラの発言に、弾かれたように希灯が振り向く。
『超偶然じゃん。どういう経緯で知り合ったの?。』
「用事のついでに少し行動を共にしただけです。あなたのことを心配していましたが……あの後ちゃんと会えましたか?」
『うん!。なんか「お前の友達に助けてもらったぞ」って言ってて、その友達ってのがなんと…………って、あれ?。誰だったっけ?。』
要救助民として未来機関に保護された叔父と再会したときのことを思い返す。
会話の内容は確かに覚えている。
しかし、肝心の名前を聞いた辺りの記憶があやふやにしか思い出せない。
「……」
『お、おかしいな……その人の名前聞いたとき、すっごく嬉しかったことは覚えてるのに……。』
普段なら知り合いを完全に忘れることなんてない。
段々頭が痛くなってきた。
「無理に思い出す必要もないでしょう。それより、もう5番目の島はいいですか?」
気が付くと、中央の島に繋がる橋の前まで戻ってきていた。
『う……うん。』
記憶の違和感に戸惑いながらも、また2人で橋の上を歩いていく。
「……誉稀の方はどうでしたか」
『え?。』
「あなたが未来機関に保護されてからは、どう過ごしていましたか?」
珍しくカムクラから質問してきた。
希灯は内心驚きつつも、真面目に答える。
『んーと……仕事覚えたりするのが大変でバタバタしてばっかりだったよ。なんだかんだクラスメイト達とも別行動になることも多くて心細かったし……。』
腐川や十神や葉隠は塔和シティのなんやかんやに巻き込まれたらしいし、苗木や霧切や朝比奈も各々忙しそうだった。
『感覚的にはこないだまでピカピカの高校1年生だったのに、いきなり崩壊気味の世界に投げ出されて社会人として働かされて……江ノ島盾子に奪われた数年間の記憶は戻してもらえたけどさ、なんだかずっと精神が追いついてこない感じ。絶望とか希望とかのために……あとどれだけ人生を費やさなきゃいけないんだろ。』
拾ってくれた未来機関には恩があるし、普通の生活を取り戻すためには機関員として世界の復興に尽力するしかない。
我慢と諦めだけで毎日を過ごしている。