第1章 苦悩
「一織さん。」
食事が済み、各々が部屋に戻るタイミングでマネージャーに呼び止められる。
「はい。私に何か??」
「明日のお仕事について、確認したいことがありまして。」
資料をぎゅうと握りしめ、若干上目遣いになるマネージャーに思わず目を逸らす。
「かわ...いや、なんでもありません。あぁ。Re:valeさんの企画でしたよね。」
「かわ...??そうです!!ラビチューブの撮影になるんですが......。」
立ち話もなんだろうと事務所のソファへと誘導する。
「マネージャーは座って待ってて下さい。私は飲み物でも持ってきます。お茶でいいですか??」
彼女が腰をかけたタイミングで声をかける。
「いえ、そんな!!私が持ってきますよ!!一織さん学校でお疲れでしょうし、明日もお仕事あるんですから。」
「そんなこと言ったら、あなたは毎日毎日マネージャーとして働きっぱなしじゃないですか。」
「それは...。」
立ち上がろうとしたマネージャーを制し、テーブルの上の資料に目をやる。
「私が飲み物を持ってくる間に、話したい内容や相談事項をまとめておいてください。そうすれば、話がスムーズに進みます。お互いの為です。」
「...わかりました。ありがとうございます。」
しぶしぶといった様子で了承したマネージャーを横目に、その場を後にする。
キッチンに向かいながら、もっと優しい言い方があったかもしれないなと思う。
なぜ自分は自分の気持ちを素直に伝えることができないのだろう。
きっと七瀬さんだったら
『マネージャー疲れてるだろ??オレが取ってくるよ!!ゆっくりしてて。いつもありがとう。』くらいは言いそうだ。きっととびきりのキラキラスマイルもセットで。
ふぅと一人ため息をつく。
彼女の前だと余計に素直になれない自分がいる。今更そんなことに気がついた。
...戻ったら、遠回しでもきちんと日頃の感謝を伝えよう。
ポットに水を注ぎながら、そう密かに心に決めた。
七瀬さんにも負けられないな。なんて、思ったより多そうなライバルに半ば辟易しながら。