第1章 苦悩
初めて一織さんを見たとき、なんてしっかりした子なんだろうと思った。
そんなに歳も変わらないハズなのに、あの落ち着いた佇まい。本当に高校生??と聞きたくなってしまうくらい。
でもやっぱり年相応なところはあるようで、たまに見せる優しい笑顔が、私は好きだった。
一織さんのことを"一人の男の人"として好きになってしまうまでは。
一織さんの、IDOLiSH7のお仕事が増えていく度、ビジネスパートナーとして身が引き締まる思いだった。
昔は一織さんに向けられるファンの声援が何よりも嬉しかったし、誇らしかった。
でも、今は。素直に喜べない自分がいる。
アイドルとマネージャー、絶対に許されない関係だと自分でもよくわかっている。
私はただのマネージャー。彼はみんなから愛される、今話題のトップアイドル。
私と彼の関係は仕事でしか成立しない。そう、"仕事だからこそ成立している"頭では理解している、けれど。
「......一織さんがそんなこと仰って下さるなんて!!マネージャーとしてとても嬉しいです!!ありがとうございます!!でもここまで来られたのは皆さんの努力があってこそだと思います!!これからも頑張りますので、よろしくお願いします。」
口早に話を切り上げて、逃げるように彼の元を去ってしまった。用もないのにトイレに駆け込む。
赤くなる顔を見られたくなくて。
一織さんはマネージャーとしての仕事ぶりを褒めてくれただけなのは分かっている。舞い上がることじゃない。
でも、嬉しい。本当に心の底から嬉しい。
扉を背にずるずると座り込む。
「〜〜〜っ」
声にならない声をあげながら、思わず両手でガッツポーズを決めた。
自分の高鳴った鼓動には気づかないフリをして。
一織さんが褒めてくれた。それだけでどんなに嬉しいか。
若干あがったような気がする体温。
顔を両手でパタパタと仰いで熱を冷ます。
「よし!!」
明日の仕事に向けて、もう一度資料を整理してから寝よう。
明日も彼を、彼らを全力でサポートできるように。
よいしょと立ち上がりトイレを出て、スタスタと歩く足取りは心做しか軽くなっていた。