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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第15章 月と袈裟


先程、祓った呪霊よりも
遠くにいるはずなのに気配が濃い…

遊佐が、しっかりとした口調で伝える
「紅海ちゃん、無理したらあかんで?
ちょっと範囲広めで帳下ろしとくわ
ヤバい思たら撤退して応援要請、時間決めとこか?」

『遊佐くんありがと、
とりあえず、何体いるか…って感じだね
1時間…うーん、1時間半かな?
それで帰らなかったら、お願いしても良い?』
「了解」
紅海を見送り遊佐は帳をしっかり下ろす

鳥居は朽ち、しめ縄は黒ずんでいる
境内に踏み入れた瞬間、耳鳴りのような圧が鼓膜を打った。

地面が湿っている
いや、湿っているのは空気そのものだ
肺に入るたび、重い


鬼退治、山神、祟り
様々な伝承の重なり…
人の想像は、長い時間をかけて現実を侵食する

拝殿の奥。
御神体があったはずの空洞から、濁流のような呪力が溢れている。

――パキッ
乾いた枝の音
振り返った先に、小さな影

『え、野薔薇ちゃん?』
「あ、紅海ちゃ…」

言い終わる前に、空気が裂けた

拝殿の闇が持ち上がる。
平面だったはずの影が、ゆっくりと立体を得る

捻れた角。裂けた口。爛々とした瞳
“鬼”という概念を、そのまま煮詰めたような呪霊

背筋を冷たいものが走る
次の瞬間、鬼が跳んだ

速い
『っ!』
紅海は反射的に野薔薇を抱き込み、背中から衝撃を受け、肺が響き、地面を転がる
木に激突し、視界が白く弾けた

「っわ!紅海ちゃん!」
ゲホゲホと咳き込む
『っ、あっぶなかったぁ…!』

咳がこみ上げる…体勢を立て直した所に
森の奥から、ざわりと音がした
黒い小さな影
ネズミに似た形をした呪霊が、地面を埋めるほど湧き出してくる

鬼は、紅海を連続して攻撃してくる
野薔薇を守りながらでは、いずれ詰む

岩盤に呪力を流し込む
術式で地形を変形させ、壁をせり上げる
ガラガラと巨岩が立ち上がり、鬼の爪を受け止めた
衝撃で亀裂が走る

この壁が崩されるのも時間の問題だ
紅海は野薔薇に向き合い肩を掴む

『聞いて、来た道、分かる?』
「私も戦う!」
『ダメ…その代わり、お願いがある
下に降りて、私と一緒にいたお兄ちゃんに助けを求めて、出来る?』

悔しい顔、それでも、野薔薇は頷く
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