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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第14章 甘い蜜とうたた寝


═閑話═
流鏑馬紅海は、生まれた時から“欠け”のある人生だった

母は優秀な呪術師だったと聞く
紅海が赤ん坊の頃、呪霊から、彼女を庇って命を落とした
写真の中の母は凛としていて、自分と似ているのかどうかも、よく解らない

父はイタリアと日本のハーフで
イタリアで悪魔払いをしていて日本で呪術を学ぶために補助監督として活動していた
祖母は陽気な父に良く苦笑していたらしい
父は強くて優しくて…
その背中も、紅海が小学校に上がる前に呪霊によって亡くなる

世界は理不尽だと、幼い頃から知っていた

小学校に入り
校庭の隅に溜まる黒い生き物
廊下にへばりつく、濁った気配
皆が見えないものが見えた

それを知らずに口にして、変な子と呼ばれ
女子からは距離を置かれ、男子からはからかわれた

だから、漫画とゲームとテレビに逃げた
画面の中の世界は優しかった
ルールがあって、理不尽にさえも意味があった

中学で同級生が「好きな人」の話をし始めた時も、遠い世界の出来事の様だった

どうしてあんなに自然に両想いになれるのか
どうして告白なんて事が出来るのか

恋愛はフィクションで、自分が立つ場所とは交わらない、物語の中の感情

男子が怖くて高校は女子高を選んだ
同級生の恋愛話が中学の時より過激で
半分以上理解できなくて、少しだけ異世界の住人を見る様に眺めた


高専に編入して教室に入った時、男子がいて少し身構える

けれど悟と傑は、拍子抜けするほど普通で
子供みたいな内容で会話していて
変に踏み込んで来ない
ただ対等に話してくれた

それだけで、嬉しかった
自分はやっと“普通”に進化できたのだと思った

冗談を言い、笑い、任務で背中を預ける
それで十分だったはずなのに

今、胸がざわつく
でもそれが恋なのか自分の気持ちが解らない

この年齢で恋愛経験どころか男性に免疫が無さすぎて
自分が情けなくなる

同世代はもうとっくに、自然に軽やかで幸せそうに
誰かを好きになっているのに
明らかに、レベルが足りていない

人それぞれなんだから、しょうがない
そう思えたら少し楽なのに、まだそこまで強くはない

紅海は、今はまだ、スタート地点

物語の外にいると思っていた自分が、気づけば物語の入り口に立っている
それを認めるのが、少し怖いだけなのかもしれない
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