第14章 甘い蜜とうたた寝
そして、、2人で他愛もない会話をしながらカレーを完食する
「ごちそうさま〜、おいしかったよ」
腹の底から息を吐くみたいに、五条が背もたれに体を預ける
食後の一言なのに、その緩み方がやけに無防備に見えた
紅海は、お皿を片付けて
キッチンで紅茶を用意してから、そっとテーブルに置く
『美味しかったみたいで、良かった
これカレー用意してなかったら緊張してたかも?
悟って美味しそうなものばっか食べに行ってそうだし』
「やだ、紅海ちゃん、偏見よ!
自分でも、ちゃんと料理してるんだからねっ」
と、わざと冗談だと解るように五条が言う
『あはは、それが、プレッシャーなんだよ!
悟って器用なんだもん
絶対に、料理も完璧にこなすでしょ?』
「まぁまぁ、そうだね〜、それなりは出来る?
にしてもさ、意外に、紅海って家庭的だよな」
『“意外に”は余計だよ!』
即座に返すと、五条は楽しそうに笑う
その反応すら、昔から変わらない
五条は、ふと部屋の棚に視線を向ける
「あ、これアレだろ? 高専ん時に、皆で観に行った映画」
手に取ったのは、少し擦り切れたケース
海賊が主役の、有名な映画のDVD
『そう! 覚えてたんだ!
皆で結構映画に行ったよね?』
思わず声が弾む
忘れられてると思っていた…
自分にとっては凄く楽しい思い出も
その人の人生にもっと楽しい事が有れば
他人にとっては些細な事で忘れてしまうから
映画の後にファミレスに寄って感想を言い合った事や
自身が無意識に零した言葉も覚えているけど、
皆にとっては、遊びに行った中の1つの出来事で…
と、思っていたのに、五条が口を開いた
「紅海がさ、船長カッコいいとか言い始めて
どの辺がカッコいいんだよってね?」
『だって、カッコいいんだもん
自信満々に自分の好きな事して
無邪気で、意外に強かったり
最悪の状況でも、なんとかなって乗り越えたり
ちょっと面白いところ有ったり!
うーん、なんだろポジティブな気持ちになるんだよね』
「すっごく語るね…ほらでも、思い出を美化しすぎてない?」
五条は肩をすくめる…そして
「じゃ、見るか」
『え? 見るの?』
「いいだろ?」
断る理由は特にない
でも、これ見てたら時間大丈夫かな
胸の奥が、ほんの少しだけざわつく
『じゃぁ…』
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