第14章 甘い蜜とうたた寝
二人は取り留めのない話をしながら歩く
生徒達の事、高専時代の話や京都でいた時の話
どれも他愛ない…冗談を言い合って二人で盛り上がる
しばらくして、紅海がふと思い出したように顔を上げた
『そう言えば…悟、晩ご飯って食べた?』
「ん? いや、まだ」
『だよね?うちで食べる? 昨日の余ったカレーになるけど』
それは本当に、それ以上でもそれ以下でもない言葉だった
下心も、甘えも、駆け引きもない
送ってくれている事への、ただの気遣い
五条は一瞬だけ、言葉を選ぶ
「紅海が良いなら…
丁度、カレー食べたい所だったし?」
わざと嘘を付く
『ふふっ、またまたぁ、普通のカレーだからね?
ハードルあげちゃダメだよ?』
その瞬間、五条の胸の奥がわずかに熱を持った
自分を、私生活の境界線の内側に入れてもいいと言われた気がして
その事実が、思った以上に響く
でも、紅海の性格上、本当に食事だけ誘っているのは知っている
知ってるが故に、他にも気軽に男を入れていないか心配でもある
『じゃ、決まり!他に少しだけ買い物させて?』
と、紅海は、また歩き出す
そして、アパートが近づくにつれ、五条は珍しく緊張する
「いや、ちょっと待って、紅海んち1階?」
『え?うん、何で?家賃、2階や3階より安かったんだよ?』
「そうじゃないって、普通、1階って防犯関係で避けるでしょ?」
『そーなのかなぁ?』
だめだ、普通の女性としても全然危機感がない
鍵を開ける紅海の背中を見ながら
世間知らずなのか何なのか…紅海の事がより心配になって来た
玄関のドアの上に札が貼ってある
どうやら、中の4隅にも貼ってあるらしい
『この札…呪霊避け…お祖母ちゃんがね作ってくれたの』
「なるほどねぇ」
玄関の灯りが点いて奥が見える
少し広い1DK…部屋に入るとソファが見える
「へぇ、いいソファ持ってるじゃん。紅海の趣味?」
部屋に入るなり、五条は遠慮なく腰を下ろす
沈み込み具合を確かめる様に軽く体重を預けて
『あ、それね、遊佐くんが、そろそろ買い替えようと思ってたからあげるよって言ってくれて…でも、それはそれで申し訳ないから、安く譲ってもらったの』
「え、元々、あいつのだったの?大丈夫?
変な染みとか、盗聴器とか付いてない?」
半分冗談めいた口調