第13章 瞑想とチョコ
══ 閑 話 ?══
京都へ向かう帰路の新幹線
窓の外を流れる景色は、昼と夕方の境目で、色を失いかけている
庵歌姫は肘掛けに腕を預けながら、斜め前の人物を見て口を開いた
「由布湯、もう少し遅い便で帰っても良かったんだよ?」
遊佐由布湯は、薄い色の眼鏡越しに一度瞬きをして肩をすくめた
「あぁ、いやいや…付き添いで来させてもろただけで、充分ですよ」
「でも、紅海と、ちゃんと話す時間、そんなになかったでしょ?」
遊佐は一瞬、考える素振りを見せて小さく笑った
「ええんですよ…
紅海ちゃんは自己肯定感、低い子やから」
言葉を選ぶように…
「追いかけ過ぎても、逆に引いたり警戒してまうと思うんですよ
“あ、自分の事、ちょっと気にしてくれてるんやなぁ”
そのくらいが、ちょうどええ」
新幹線の走行音が、会話の隙間を埋める
「それを何回か、間隔あけて押すと…
コロっと、ね?」
遊佐は、さらりと言った
歌姫は、反射的に顔をしかめた
「あんた…怖いわ」
本音だった
「紅海が心配になってきた」
由布湯は苦笑し、両手を軽く上げる
「いやいや、庵さん
僕は純粋に恋愛してるだけですし」
その“純粋”という言葉に、歌姫の眉がぴくりと動く
「紅海ちゃんの事、不幸にはせえへんので…それだけは、ほんまです」
遊佐は歌姫の方を見た
「ただ、呪術師って、生き方が歪みやすいでしょう?
守る側に回る人ほど、自分を後回しにする」
それが誰のことを指しているか、歌姫には解った
「紅海ちゃんは特に
“自分が欲しがっていい”って感覚が、抜け落ちてる」
遊佐は、指先で膝を軽く叩いた
「せやから、押し付けたらあかん
紅海ちゃんに選ばせな意味がない…
極論、選ばれるのはボクで無おてもええ」
歌姫は、深く息を吐いた
「理屈は分かるけどさ…
あんたの言う事が本当なら
相手が五条悟よ?あんたの思惑通りにいくと思う?」
遊佐は、くすっと笑った
「いかへんでしょうねぇ…せやから、面白いんですわ」
歌姫は、呆れたように天井を仰ぐ
「あんた、ほんと厄介ね」
遊佐は、最後に声を潜めた
「あ、これ」
眼鏡を指で押し上げながら、にこやかに
「絶対、黙っといてくださいね?」
新幹線は、何事もなかったように走り続ける