第13章 瞑想とチョコ
家に帰って、雑に靴を脱ぐ
いつもの帰宅ルーティンを無視して
五条のくれた小さな白い紙袋を開けたくて
すぐにテーブルの上に置くと
紙袋から小さな箱を取り出して包み紙を綺麗に開ける
「ゎぁ…」
小さく、感嘆の声をあげる
ボンボンショコラ
中にアルコールが入っている
紅海が昔から好きなやつ
すぐにスマホを手に取る
《悟、チョコありがとう!私の好きなボンボン!》
送信
数秒後スマホが震える
《さすが、僕だね!》
思わず、くすっと笑ってしまう
《そーだね笑》
画面を閉じて、チョコを一粒口に入れる
薄いチョコレートが割れて、洋酒の甘さが舌に広がった瞬間
高専の時の記憶が引き戻される
——高専時代
バレンタインに、紅海は五条と夏油にチョコを渡した
勿論、友チョコと言うやつ
すると
3月になって、教室で夏油が机に腰掛け、いつもの柔らかい声で聞いてきた
「紅海、ホワイトデーのお返し、何がいい?」
紅海は少し考えて、おねだりしてみた
「わたし、お酒の入ったチョコが好き!」
横から五条がわざと噛みつく
「え、酒入ってんの未成年買えるの?」
「いや、あれは酒に入らないでしょ」
淡々と夏油が答える
五条は、ニヤリと笑い
「そもそも紅海、酒入りチョコ食べてる時点でアウトじゃない?
未成年飲酒!よし、訴えよう!」
『ちょっと!そうなったら、傑に弁護頼むもん!』
「いや、私は呪術師であって、弁護士ではないからなぁ」
「紅海、逆転裁判なら俺に任せろ」
『ゲームの話!?いや、悟が訴えるとか言ってたのに
訴える本人が弁護とかセルフ裁判だからね!』
意味もなく話が膨らみ、大笑いして、でも楽しくて
その後…
傑からは、可愛い包み紙に入った、二粒だけの上品なボンボン
悟からは、スーパーで買える、ラムレーズンが入った板チョコだった
それを思い出して、紅海は小さく息を吐く
「…まさかね」
覚えているはずがない、きっと偶然
たまたま選んだだけだよね
チョコの箱を見下ろす
スマホが震えた
《紅海って
ボンボン、好きだったよね?》
紅海の心臓が跳ねた
覚えててくれたんだ
返事を打とうとして
その前にチョコをもう一粒、口に放り込む
甘さの奥に、少しだけ強いアルコール
胸がじんわり熱くなった