第3章 呪霊と分岐点
祖母の 流鏑馬浅葱( やぶさめ あさぎ)は、神社の神職でもある
神社の境内の建物ー
紅海は、縁側に座っていた。
制服は洗われていたが、袖口の染みは落ちきっていない。
祖母の浅葱は、正面に座る
「 紅海」
名前を呼ばれただけで、少し身構えてしまう。
「高校を変えるよ」
相談ではない命令に近い口調だった。
『今の学校は?』
「…今の、あんたに通えるとは到底思えないねぇ」
『うっ…』
紅海は反論できなかった
『でも…学校を変えても、私…うまく出来るか』
浅葱は、 紅海の言葉を遮る
「呪術高専」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がざわついた
呪術高専
父と母が通っていた高校
話としては聞いていた
危険で普通の人生から外れる場所
『……そこ、って』
紅海は、うまく言葉が出ない。
『その…私が行ってもいい所なの?』
葵は、 紅海をまっすぐ見た。
「行かせる…昔の伝手で、すでに話は通してある」
断定
「このまま普通の高校に置いておくほうが、危険だ」
紅海は、唇を噛む
二つの感情が、同時に湧き上がる
父と母は、どんな場所で学んでいたのか
どんな仲間と、どんな時間を過ごしていたのか
自分の知らない、二人の過去
もうひとつは、怖さ
あの事件
血塗れで倒れて、気味悪がられて、
誰にも肯定されなかった自分
『……私に、資格あるのかな』
ぽつりと零れた声
浅葱は、少しだけ目を伏せた
「資格なんてものは、後から付いてくるよ」
そう言ってから、続ける
「ただし、ココに行かせるのは、お前に立派な呪術師になって欲しいからじゃない」
紅海は、息を呑む
「お前は、自分を大事にすることを覚えなさい
簡単に命を賭けるな。背負うな。抱え込むな
とにかく、自分と大切な人を守る術(すべ)を覚えるんだ」
浅葱の言葉は、厳しくて、優しかった
紅海は、膝の上で拳を握る
『…分かった』
顔を上げた
『行く』
自分の居場所が、
まだどこかにあるかもしれない、ということだけを
胸に抱いた。
浅葱はゆっくりと頷く
数日後
知らない制服
知らない校舎
知らない同年代の術師たち
呪術高専へ編入