第3章 呪霊と分岐点
紅海は幼い頃、呪霊に両親を殺され、呪術師の祖母に引き取られる
祖母の元で呪術師の修行はしていたが、
進路は普通の女子高
紅海を危険な道へは導きたくなかったため祖母は反対しなかった
中学の友達はいなかったので高校デビューを試みるも
おしゃれな友達と話せば浮いてしまい
秀才グループに入ろうとすれば避けられる
仲良い友達は、まだ出来なかったけれど
まぁまぁクラスに馴染んでいった
紅海の通う高校には、古い祠があった
校庭の隅、誰も近づかない場所
昔から「触るな」とだけ言われ、説明されていない類のものだ
壊れたのは、放課後だったらしい
誰が、どうして、はどうでもいい
問題は"壊れた"という事実
夕方、 紅海は違和感に気づく
空気が重い。耳の奥が、じわりと痛む
『…来てる』
呪霊が、湧いている…しかも、一体や二体じゃない
校舎内から、悲鳴が上がる
最初は喧嘩だと思われたが
そのうち暴れる人間が多くなる
ゾンビ映画のパニックシーンを見ているようだった
憑かれている!
分かってしまった瞬間、足が動いていた
紅海は走った、教室、廊下、階段へ
憑依された生徒の背に飛びつく呪霊を引き剥がす
祖母に教えられた最低限の術式での祓い
それだけで、足りるはずがなかった
それでも、やめなかった
先生を助け、友達を助け、知らない生徒も助けた
校舎の窓の外から月明かりだけが差している
紅海の視界は、もう霞んでいる
腕は震え、足は鉛のように重い
それでも、祓った
呪霊は百体を超えていた
祖母の顔が浮かんだ
「自分を削る祓いはするな」
守れなかった約束を、噛み締めながら
最後の一体を祓った時
紅海はその場に崩れ落ちる
子供が帰らないと言う保護者からの通報で駆けつけた警察官が見たものは
気を失った大勢の生徒と教師
誰のものかも解らない血…
紅海は、そのまま意識を失った
警察に呪術界に精通している人間がいるのだろう
事は収まったかの様に見えた…が
「気味悪い」
小さな声が、確かに聞こえた
助けた相手の中には、彼女を見て後ずさる者もいた
紅海は、何も言えなかった
彼女の人生を変える事件は
“呪霊を100体以上祓った少女”の噂として呪術高専に届くことになる