第11章 目覚めと目覚め
そう言われ、紅海は記憶を呼び起こしていた
昨夜の記憶は断片的だ
硝子が悟を呼んで…迎えに来たのは、うっすら
で、どうだったっけ
そもそも、硝子は何で私を連れて帰ってくれなかった!
脳内で硝子にクレームを入れていた所で
五条が悪い笑みで、ふっと思い出したように口を開く
「あ、そういえばさ」
人差し指をわざとらしく顎にもっていき
まるで昨日の天気の話でもするような調子で
「昨日は、僕の上に乗りたいって、紅海が乗ってきて」
一瞬、空気が止まる
紅海の思考が、完全にフリーズした
『はぁぁぁあっ!?何もしてないって、さっき!』
顔に一気に熱が集まる
耳まで赤くなるのが自分でもわかる
「や、変な事はしてないよ?
紅海が僕に乗っかってきただけだから」
『な、なななな!』
五条は、そんな紅海の反応を見て、口元だけで笑った
「覚えてない? 結構、堂々と大胆に」
五条の余裕!
完全に余裕!!
紅海撃沈ッ!!
「僕の上で、あんなに甘えて、素直だったのに…」
誤解を生む語彙のフルコンボ!!
ザワザワ…
ザワ…
紅海は勢いよく首を振る
「うううううううそうそうそうそ」
声が裏返る
五条は「おっと」とでも言う様に両手を上げる
「あー、そうそう…おんぶの話ね〜
紅海、急に、おんぶしてって言い始めて、
僕が、おぶって帰った話〜」
わざとらしい
絶対に解ってて言っている質が悪い
「いやぁ、珍しかったからさ
『悟……おんぶ……』って」
声色を、ほんの少しだけ真似る
「可愛かったよ?」
完全に軽薄!
完全に最強!
まくらを五条に投げるも跳ね返される
紅海は布団を引き上げ、顔を半分隠す
『完全に誤解するじゃん!』
あれ?私、おんぶ、おねだりしたの?
それはそれで恥ずかしくない?
『…っ、忘れて!おんぶの事、お願いだから!』
「え〜?あんなに振り回されたんだもん、むりむり〜っ」
五条は、わざと、口を尖らせて拒否する
紅海は、反論する力も失せて、ため息をつく
五条の行動を視線で追うしかなかった
五条は気にせず、シャツに腕を通しボタンを止め
振り返りざまに言った
「とりあえずさ、顔洗ってきな
朝ごはん、どうする?」
何事もなかったように着替えを終え部屋から出ていく