第13章 瞑想とチョコ
1年生に瞑想を教えた日の放課後
校舎は、少しひんやりして夕方の光が廊下を斜めに切り
床に長い影を落としている
東京校に庵歌姫を見つける
『歌さ…………ぁ』
紅海は声を出し掛けて言葉を飲み込む
庵の向かいには五条悟
距離は近く、空気は軽く、いつもの光景だ
五条は、わざとらしく肩をすくめながら庵をからかっている
庵は眉をひそめ、露骨に嫌そうな顔をしているのに
そのやり取りは途切れない
怒っているはずなのに、会話が続いているという事実が、どこか不思議だった
……仲、良いよなぁ
紅海の目には、じゃれ合いの延長の様に映ってしまう
それを自覚した瞬間、少しだけ胸が何故かチクリとした
「紅海ちゃん、久しぶりやな、こないだの東京観光以来やん」
振り返ると、そこに遊佐由布湯が杖を持って立っていた
薄い色の眼鏡越しに、柔らかく笑う
『え?あれ?遊佐くん?
歌さんといい、京都で何かあったの?』
「いや、庵さんと次の京都校の入学生のリストを東京校に渡しに来てん、あとその他事務手続き諸々な」
少し肩をすくめて、苦笑する
「こういうとこ、相変わらずアナログやし、“古き良き習慣”を重んじとるなぁって思うわ…非効率的やけど」
何でも任される補助監督らしい言葉
「でもまぁ……」
一拍置いてから、遊佐は紅海を見る
「紅海ちゃんに会えたから、プラスやな
あれ?そのシュシュ、よう似合うよ…可愛いなぁ
あげた人のセンスがええわ」
『ふふっ…もぉ…』
紅海は、その冗談に思わず笑ってしまう
『コレくれたの、遊佐くんでしょ?ありがとね?』
指先で無意識に髪を触り、シュシュを確かめる
先日のハグを思い出してしまい
胸の鼓動が跳ねる前に勘違いするなと思考から消す
—その様子を、少し離れた場所から五条が気づいた
先日、酔いつぶれた紅海を送った夜
紅海に対しての気持ちを自覚した
この気持ちは解ってしまえば簡単、自己完結して
特に紅海にアピールするつもりも無い
…と、整理していたのに
こういう何気ない距離が、やけに目につく