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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第12章 傷と夜空



紅海は、隣で歩く七海の顔を見ながら

『だからさ~、七海の元同僚の人とか、
紹介してもらおうかなぁ~って』

七海の足が、ほんの一瞬止まりかける
「…はい?」

『あ、もちろん! 友達として!社会勉強の一環!』
慌てて誤解しないでねと、手を振る紅海

彼女は自分の知らない世界を知りたいだけだ
七海は小さく息を吐いた

「…考えておきますが
ただ…お勧めできる人材が、あまりいませんよ…
いえ、全くいないかもしれません」
『えーっ、何それ~』

くすくすと笑う声が、夜道に溶けていく

『…わ、今日は空が綺麗だね』
ふと、紅海は足を止め、星空を見上げた

『ね、昔さ…お父さんが亡くなった時にね
おばあちゃんが言ってくれたんだ
「おまえの両親は星になって見守ってるよ」って』

言葉を選ぶように、ゆっくりと続ける
『それでさ不思議だけど…ちょっと元気出たんだよね
こうやって星が綺麗に見えてる夜に、
「あの星がお父さんで、あの星がお母さんかな?」
って想像して』

「…そうですか」
七海は、星を見る
それが慰めになる感覚を否定はしない
同時に、信じ切れない自分もいる

『だからね、多分…灰原も、傑も、見てるよね
…って思ってるよ』
七海の胸が、わずかに詰まる

肯定も否定も、簡単には選べなかった
「…どうでしょう」
『え~』
紅海は不満そうに声を上げ

夜空に向かって指を指す
『じゃあさ、灰原は、ほらあれ!
あの、1番光ってるやつじゃない?
元気だったし、目立ってたし』

「…あれは、金星ですね」
間髪入れずの訂正だった

『も~っ! 七海~っ!』
バシバシ、と軽く腕を叩かれる
力は弱い…怒っているというより、拗ねている

七海は思わず、口元を緩めた
二人で、少し笑う
冬の夜に、その音は短く、やさしく溶けた

見守っているかどうかは分からない
星はただ、そこにある
それでも——こうして名前を呼ばれ、思い出される限り、
失われたものは完全には消えないのかもしれない

七海は、もう一度だけ空を見上げた
金星は、相変わらず無言で輝いていた
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