第2章 熱と再会
『…はぁ…怒られたなぁ』
小さく笑う。無理するな…か
その言い方に、覚えがあった
——そういえば。
『…高専の時も、こんなことあったっけ』
思考が自然に後ろへ滑る
ーーー
紅海は、ある事がきっかけで1年の初夏頃、高専に編入した
とにかく必死だった
周りに遅れを取って“守られる側”になるのが、どうしても嫌だった
任務に立つなら背中を預け合える仲間になりたい
だから、訓練に打ち込んだ
誰よりも早く来て、誰よりも遅くまで残って
その日も、放課後の訓練場
対面に立ったのは、五条悟
「手加減しないからな~」
『うん、お願い』
悟は、最初は軽かった
余裕のある動き…様子見
紅海は、床を蹴り、壁を使い、天井に触れ、距離を詰める
パルクールのような身体捌きで、間合いを崩す
「…へぇ」
悟の声色が、少し変わる
「本気?」
『…うん』
その一言で、空気が変わった
悟が、手を抜くのをやめる
圧が、違う
紅海は、食らいついた。必死だった
もっと追いつかなきゃ…同じ場所に立たなきゃ
——その時
紅海は、呪力の出力を間違えた
自分の中にある量を把握しきれないまま
一気に放出してしまった
視界が歪む
呪力が身体を内側から押し潰す感覚
「…っ」
次の瞬間、意識が途切れた
ーーー
目を覚ました時、天井があった
高専の医務室、視界に入った白い髪
「…起きた?」
五条悟が、すぐそこにいた
紅海が口を開く前に、声が飛ぶ
「お前さ」
低い声、はっきり怒っている
「自分の呪力の量、把握して出力しろよ」
『……』
「前の高校で呪霊100体以上祓ったって聞いたけど」
言葉が止まらない
「それ、自分削ってやったんじゃねーの?」
紅海は、何も言えなかった。
図星だったから
「無理すんなよ」
最後の一言が、強かった
叱責なのに、責めているのは“やり方”だけで
紅海の存在そのものは否定されなかった
それが、妙に胸に残った
ーーー
現在
紅海は、布団の中で静かに息を吐く
「…あの時も、助けてくれたんだよね」
高専時代も今も形は違うけど
五条悟は、いつも“ピンチの時に”に現れる
「……変わらないなぁ」
必要以上に寄り添わず、でも、放ってはおかない
紅海は、ゆっくりと、夢の中へ入っていく