第2章 熱と再会
五条が帰ったあと、部屋は静かだった
さっきまで人の気配があったせいか、その静けさが少しだけ濃い
紅海は、布団に横になったまま天井を見つめる
窓の外が、少しずつ橙に染まり始めている
熱は落ち着いた。
頭も冴えてきて、だからこそ考えてしまう。
『…申し訳ない、むっちゃくちゃ申し訳ない!申し訳無さすぎる!』
誰に聞かせるでもなく、呟く。
京都に配属になって、五条と連絡を取ったのは数える程
同期と言えど相手は呪術師界で最強と呼ばれる男
学生の頃は気にしなかったのになぁ
社会人になって周りからの五条の評価を聞いてビビった自分
それが久々の再会が看病して貰って
しかも東京から、京都まで。
後進育成のため教師して、何か忙しくて、任務も山ほどあるはずで。
スマホを手に取り、硝子の名前をタップする。
〈硝子、ありがと、調子良くなってきたよ
悟、もうそっち帰ってきた?〉
既読は、すぐ付いた、返事も、すぐ
〈それは良かった、悟の事は本人に聞きな〉
あっさりすぎる
『……硝子~っ』
スマホを胸の上に落とす。
どうやって聞く?“もう東京戻った?”“いつ帰るの?”
それ、聞く意味ある?
しばらく天井を見つめて、深呼吸
それでも、気になる
結局、連絡先を開く
五条悟
トーク画面の最後のやり取りは、さっきの〈生きてる連絡〉
入力欄に、文字を打っては消す。
〈もう大丈夫だよ〉
…さっきも打ったし
〈今日は本当にありがとう〉
…しつこい?
〈今どの辺?〉
…ストーカーぽい?
指が止まる
「…気まずい」
あまりにも久々の再会だったにも関わらず迷惑かけてしまって聞きにくい
その時、スマホが震えた
五条からだ
〈まだ京都〉
紅海は、思わず画面と時計を交互に見る
〈は?〉
打ってから、慌てて消して、打ち直す
〈え、まだ京都?〉
少しだけ砕けた文
数秒後
〈急変しないか様子見(笑)〉
胸の奥がじんわりする
〈ありがとう、もう大丈夫だよ〉
返事をすぐに送る
少し間が空いてから、返事
〈信用できない〉
紅海は、苦笑した。
〈ごめんなさい…無理しません〉
〈よし、じゃあ、おたべ買って帰る〉
会話は、そこで終わる
それ以上、何も続かない
それなのに、不思議と落ち着いている
スマホを置いて目を閉じた