第11章 目覚めと目覚め
適当に串もの、揚げ出し豆腐、だし巻き玉子
メニューを見て、目に入った美味しいものを頼む
お通しとお酒がやってくる
『「カンパーイ!」』
「おめでとう」
「流鏑馬さん、誕生日おめでとうございます」
七海は持ってきたプレゼントを紅海の前に差し出す
「何が良いか解らなかったので…猪野君と相談して
これは、私と猪野くんからと言う事で」
『ありがとう…猪野くんも誘えば良かった
ねぇ、これ、開けても良い?』
ラッピングの中は紅海の良く行くコーヒーショップのカード
『ありがとう!しかも、これ見て!誕生日仕様のカード!』
七海は満足そう
硝子も続けて、渡す
「じゃ、これね、私から」
『やだ、もぉ、硝子ありがとう!さっそく…』
硝子には遠慮がない…ギフトバッグの紐をほどくと
可愛らしい装いのリップ
「もっと、女子力上げな〜」
『えへへ、ありがとう!
このリップで女子力磨きます!』
「はいはい、リップ以外の部分もよろしく」
硝子は微笑む…昔から紅海は素直だ、眩しいくらいに
だから、硝子が、気になるのは京都の補助監…
紅海にとって害がないのかどうか
硝子は、紅海の髪に通してあるシュシュに視線をそっと向け
無言でスマホを取り出した。ブランド名を入力する
—やっぱり
値段を見て、内心で小さく舌打ちする
そして、検索ページには
【シュシュのプレゼントの意味は
“あなたと一緒にいたい”】
硝子は画面を閉じる
紅海がお礼の電話をした時の話を、さっき聞いた
『紅海ちゃんに似合うと思って』と言っていたらしい
それ以上…高かっただの、意味は…だの、余計な事は言わない
言葉選びも距離感も、やけに上手い
重くないし、軽すぎもしない
「まさか…さすがに意味までは考えてないか?」
硝子は小さく呟いた
そのまま硝子は何事もなかったように会話に戻る
七海と紅海は、東京タワーで出た呪霊の話をしていた
『あの時ね、呪霊のせいで服が破れてて
結構ショックだったんだよ〜』
「それは災難でしたね…」
『京都の時もね、結構大きいの祓ったんだけど—』
話題は、自然に京都の任務の話へ移っていく
硝子は、それを横で聞きながらグラスを傾けた
笑い声が上がり酒が進む
場は、あくまで穏やかで、楽しい
硝子だけが、ひとつ余分な情報を抱えたまま夜は進んでいく