第11章 目覚めと目覚め
医務室は相変わらず消毒薬の匂いがして
午後の光が白く差し込んでいた
コッチに帰ってきてからは、授業が終ると大体遊びに来る
ベッドに腰掛けた紅海は、肩を回しながら
『昨日の疲れが取れてない気がする~、歳かなぁ…』
「普段、呪霊祓って身体使うのに、観光の方が体力消耗する?」
硝子はカルテを見つつ淡々と返す
紅海は一瞬きょとんとしてから、身を乗り出した
『いや!それがね、出たの!呪霊!東京タワーに!ビックリでしょ?』
「ふーん?」
興味がないわけではない。ただ、硝子は“そこ”より先を見ている
「で、観光は? 京都の補助監…楽しんでた?」
『えっ…た、楽しんでたと思うよ?』
間が空いた
硝子はようやく顔を上げ、紅海をじっと見る
「何かあった?」
『…帰りに、ガバッて』
「ガバッて?」
硝子の眉がぴくりと動く
「え? 襲われたの?」
『ち、違うよ! ハグ? された』
硝子が完全に手を止めた
「ハグ…悟いなかったの?」
『いたけど…悟は、挨拶のハグだねって言ってたよ?』
語尾が疑問符で消えて
硝子は深くため息をつく
本当に、この二人はおめでたい頭だ
悟に関しては、おめでたいというより
自分の都合のいい解釈しか選ばないが正しい
「で、その、シュシュ何?」
普段付けないソレは恐らく予想は出来たが
『遊佐くんが誕生日にくれたの』
やはり…
「紅海、今日、飲み行く?続き聞く」
紅海が目を瞬かせる
「それに今日、誕生日でしょ?」
『あ、うーん…七海にも誘われてて』
なるほど、七海もか…
『硝子も一緒にいた方が楽しいし、聞いてみようか?』
「じゃあ、とりあえず決まったら教えて~」
軽く手を振って、硝子はいつもの調子に戻る
紅海は「うん」と頷きながら、どこか落ち着かない表情をしていた
その日の夜
紅海は七海と硝子と、居酒屋の暖簾を潜る
『悟も呼べば良かったかなぁ…』
「まぁ、良いんじゃない?紅海に特に何も言ってこなかったんでしょ?」
『うーん、確かに…それに、悟、忙しい人だしね
こっちから誘うと、私の誕生日祝ってってアピってるみたいだし?』
「祝ってほしい?」
『どーだろ?悟に祝って貰っても祝われなくても
歳はとっていくものだしね?
…ぁ~複雑~っ!』
そうやって、奥の気持ちを曖昧にする