第10章 覚悟と蓋
「なんでもないよ…ほら、見送るんだろ?」
五条は、紅海に軽く促して
3人で改札口に向かう
「 紅海ちゃん、今日はありがとな。あ、五条さんも」
遊佐は軽く手を挙げて、オマケの五条に手を振った
『遊佐くん、今日はありがとう
お土産、ちょっと重いけど…皆で食べてね?』
彼は一度、荷物を置いて、一歩、 紅海のほうへ寄る
何もためらわない
「ちょい、来て」
手招きをするより早く、腕が伸びた
気づいたときには、 紅海の視界は遊佐の胸の中に有った
『ぇっ!?』
息が詰まるほど強くはないけれど…
紅海は、理由の整理が追いつかないまま
鼓動が早くなる
驚きなのか、動揺なのか…
周りの知らない人達の視線が恥ずかしい
遊佐はしばらくそのまま
紅海の事を何も言わずに抱き締めていた
一度は 紅海を利用しようとした自分の罪悪感
紅海を好きだと言える資格があるのか…
紅海の反応で、それを試すかの様に
拒まれないことを、身体で確かめる
やがて、そっと肩に手を置いて離れる
「ははっ、突き飛ばされんかったっちゅうことは、
嫌われてへんっちゅうことかな?」
冗談めかした笑顔
紅海は何も返せない
遊佐は、それでも良いし
突き飛ばされなかった事で覚悟が決まる
自分は誠実でもないし欲にまみれた人間だ
それでも、どんな手を使ってでも
紅海が傷つかない世界を作る覚悟
その様子を、何も言えず、五条は少し離れた場所から見ていた
嫉妬と呼べる程の不快感
だが、心の奥を探る事はあえてしない
あの2人の関係に割って入る理由はない…
五条はこの気持ちに蓋をする
立ちすくむ紅海の横に五条は並んだ
口元に笑みを貼り付ける