第10章 覚悟と蓋
遊佐は杖に体重を預けながら、思い出すように話す
「最初はな、正直、利用するつもりやった」
五条の眉が、ほんの僅かに動く
「 紅海ちゃんと出会った時、あの五条悟と同期やって聞いて、 紅海ちゃん口説いて五条家に近づけたら都合ええなぁって」
「ははっ、最低だね…」
本気か軽口か解らない口調
「せやろ?」
遊佐は否定しない
「でもな…一緒に任務こなしてるうちに、分からんようになった
自分の身、削ってでも、知らん術師かばう人やで
それでも、利用しようと思とったんやけど」
「ある時、一緒の任務で、ぼくが足を怪我してん
ほんでまぁ、何や有って、助けられて
その後、ぼくを助けたせいで身体に反動有ったみたいで
紅海ちゃん高熱出して寝込んだらしい」
「正直、アホやと思った…他人助けて、自分が熱でて動けんようなったら意味ない」
「でもな…気ぃついたら、 惹かれてもうて…
ほんで、コレや…怪我して補助監督なった方が 紅海ちゃん支えられるし、ずっと側で居れるやろ?
紅海ちゃん、京都ではえらいモテて
無自覚すぎて好かれてんのも
気付かへんかったかもしれんけど
安心して?変な虫は寄せ付けへんかったから」
紅海がモテる?そんな事すら考えなかった…
コンビニのガラスから見える 紅海は
京都に持って帰って貰うお土産を迷っている
「五条さん」
遊佐が、五条の方をまっすぐ見つめる
「あんたな最強かもしれへん
けどな…自分の気持ちに蓋してるわ」
五条は、何も言わない
「今日は、五条悟が、どんな男か見に来たかってん
ほんで、出た答えが、どっち付かずで、ぬるい男やったわ」
肯定も否定もしない五条
「ぼくはな、 紅海ちゃん幸せにするつもりや…
いや、幸せにしたるよ」
五条は、しばらく何も言わなかった
言えなかった
やがて、いつもの調子で五条は口を開く
「はは!随分、自信あるよね…」
絞り出した精一杯の余裕
「あるよ…覚悟もな
紅海ちゃん、押しに弱そうやしな」
軽く冗談を言って笑う
その時、コンビニの扉が開いた
紅海が、袋を抱えて小走りで戻ってくる
『ごめんね、お待たせ!』
その声で、世界が戻る
五条は、 紅海を見るが何も言わない
『何?悟?具合悪い?』
すぐに人の機微に気付く…