第2章 熱と再会
昼前。カーテン越しの光が強く差し込む
紅海は、ゆっくりと瞬きをした。
頭の奥に残る鈍い重さはあるが、昨夜の熱に比べれば、世界がはっきりしている
『…だいぶ、楽』
視線を横にやると、椅子に腰掛けた五条がいた
背もたれに身体を預け、脚を投げ出している
「お、起きた」
軽い声
『…夢じゃなかった』
「失礼だな」
紅海は、布団に手をついて少しだけ上体を起こす
『悟、忙しいのにごめん』
言葉にすると、久々に会ったのが、こんな形で、看病までさせてしまって昨晩の申し訳なさが戻ってくる
五条は、立ち上がって近づくと、前触れもなく額に手を当てた
「まだ熱あるな」
『下がってはいるよ』
「自己評価は禁止」
紅海は、思わず小さく笑う
『厳しいね』
五条は手を引き、肩をすくめる
「厳しい? これでも教師なんで」
『ふふっ、見えないけどね』
「良く言われる」
そのやり取りは軽い
でも、 紅海の胸の奥は、少しだけ温かい
テーブルに置いてあった体温計で確認する
「37度前半か。昨日よりはマシだな」
『…もう大丈夫だよ』
紅海は、無理を悟られない様に少し明るく言う
五条は黙って頷き冷蔵庫からペットボトルを一本取り出し、ストローを差して渡す
『ん…ありがとう』
指先が一瞬触れる
気にも留めず五条は時計を見る。
「じゃ」
短い一言。
『…帰る?』
紅海の胸が、わずかに沈む。
「帰る」
あっさりすぎる
上着を手に取り玄関へ向かう五条
引き留める理由も引き留める関係でもない。
「悟…ありがとう」
紅海の声は、少しだけ小さかった。
五条は振り返る。
「倒れる前に呼べばよかったのに」
『迷った』
五条はため息を付く
「今日は外出も任務も禁止!
俺が京都中の呪霊に言えば聞くでしょ」
軽口を残して五条は出ていく
部屋に残ったのは、 紅海ひとり。
テーブルの上には、買い足された飲み物やゼリー
手書きのメモ
〈無理したら殺す!うそ!冗談!でも無理するな〉
紅海は、思わず苦笑した
「…ありがと」
そう呟きながら、布団に身体を沈める
暫くして携帯が震える
〈具合どう〉
たった一言
紅海は、少し考えて打ち返す
〈まだ寝てるけど、大丈夫〉
すぐに返事は来ないが不思議と心細くはなかった